ヤフーが企業版ふるさと納税で森林整備支援 公募方式で宮城県、尾鷲市、新潟県を採択

ヤフー(株)(東京都千代田区、川邊健太郎社長)は8月24日に企業版ふるさと納税制度を利用した「Yahoo! JAPAN 地域カーボンニュートラル促進プロジェクト」を発表し、第1弾として8自治体に約2億5,000万円を寄付していることを明らかにした。公募方式で選ばれたのは、北海道三笠市、宮城県、埼玉県、神奈川県平塚市、新潟県、山梨県、三重県尾鷲市、鹿児島県大崎町で、森林・林業分野では宮城県、尾鷲市、新潟県が採択された。

カーボンニュートラルをテーマにした企業版ふるさと納税が行われたのは国内初。審査では、①脱炭素に対する直接的インパクトがあるか、②独自性・地域性があるか、③横展開可能なモデルとなるか──を重視した。ヤフーの担当者は、「世界的に陸や森の豊かさを守ろうと言われる中で、林業は益々重要になってくる」と話しており、今後も公募・審査を継続して、支援自治体を増やしていく方針。大手IT企業のヤフーが森林づくりに乗り出したことが契機となって、民間資金を財源にした森林整備が活発化していく可能性がある。

海岸防災林造成や市有林のゾーン別整備、品種開発も後押し

同プロジェクトの支援対象に選ばれた宮城県には、「海岸防災林の適正管理と藻場造成」をテーマに約2,700万円が寄付された。同県は東日本大震災時に、国有林・民有林合わせて約1,300haの海岸防災林が津波によって流された。今回の寄付では、約753haある民有林のうち、約146haのクロマツ林と広葉樹林を対象にする。これまでもNPOや民間団体が連携して森林整備を行ってきているが、高齢化により継続が難しくなっている面もあるので、寄付金を利用して人材育成などをサポートする。森林整備を通じて、10年間で1万1,800tの二酸化炭素(CO2)が削減できる見込み。

尾鷲市には約2,600万円が寄付され、「尾鷲ヒノキ市有林の若返り」に取り組む。同市は、60年生を超えたヒノキ林を約5,000ha保有している。このうち約91haの市有林を3つにゾーニングして、施業目的を明確にした森林整備を進める。①生物多様性・環境教育ゾーン(50ha)では、SDGsやFSC森林認証制度の理念に基づく多様な森林づくりを実施。②尾鷲ヒノキ林業モデルゾーン(24ha)では、伝統的な尾鷲林業を将来世代に残すため、主伐後にha当たり1万本の密植を行う。③自然体験・森林ふれあいゾーン(17ha)では、子供たちが生きる力を身につける自然体験の場を創出する。①~③の取り組みによって、初年度は約800tのCO2を吸収できると試算されている。

新潟県は、約400万円の寄付を受け、「1次産業による温室効果ガスの排出抑制・削減・吸収源対策」を進める。同県の森林研究所では、成長が早い無花粉スギの実生品種の開発に取り組んでおり、寄付金を研究開発費に充てる。このほか、水田からのメタン等の発生抑制技術、園芸作物の投入エネルギー量削減技術、アカモク等有用海藻増養殖技術の開発にも取り組む。

企業版ふるさと納税制度=国が認定した地方自治体の地方創生プロジェクトに企業が寄付をすると法人関係税が税額控除される仕組み。2016年度から行われており、対象自治体は46道府県、1,185市町村に広がっている。

(2021年8月24日取材)

『林政ニュース』編集部

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