(後編)“新たな地平”に踏み出す佐伯広域森林組合【遠藤日雄のルポ&対論】

中編からつづく)2×4材の本格生産に踏み出した佐伯広域森林組合(大分県佐伯市、戸髙壽生・代表理事組合長)は、国産材の加工能力を一段と高めることで、再造林率100%を柱とする「佐伯型循環林業」を前に進めようとしている。では、新たなステージに入った同森林組合の歩みの先に待ち受けているものは何か。遠藤日雄・NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長と、組合長の戸髙壽生氏、代表理事専務の今山哲也氏、流通部長の木本博明氏による「対論」は、今後の事業戦略とともに、森林組合の使命とは何かという本質論にも近づいていく。

売り先が異なる2×4材の取引量と取引価格をあらかじめ取り決め

遠藤理事長

「ツーバイ材加工施設」の新設を後押しした大きな要因として、2023年6月にウイング(株)(東京都千代田区)などと結んだ建築物木材利用促進協定*1があるということだが、どういう経緯でウイングとタイアップするようになったのか。

戸髙組合長

当森林組合として2×4材を本格的に生産する検討を進めていく過程で課題となったのは、販路の確保だった。これまで「宇目工場」を中心として在来軸組工法住宅向けの部材を生産してきたが、2×4材は売り先が全く異なる。マーケティングなどを一から始めなければならない。思案を重ねている中で、2×4コンポーネント事業を行っているウイングが国産材の利用を推進していることを知り、意見交換などを重ね連携が深まっていった。

遠藤

ウイングは独立系のコンポーネント会社なので、商社や大手ハウスメーカーの系列に縛られずに、スピーディかつ積極的に国産材シフトを進めている*2*3。しかも、全国レベルの販売網を持っている。

戸髙

協定を結ぶ際に重視したのは、2×4材の取引量とともに取引価格についても一定の取り決めをすることだった。これにはウイング側も十分に理解を示してくれて、取引量は年間1万m3でスタートして段階的に増やしていき、取引価格は通常の製品価格に再造林費用を上乗せして決めていくと申し合わせた。森林の循環利用を可能にする取引価格で合意できた意義は大きいと考えている。

モルダー処理後の2×4材

大型パネル工法なども交えて顧客のビジネスをサポートしていく

遠藤

戸髙組合長から2×4材は売り先が異なるという話があったが、現場レベルではどのように感じているか。

今山専務

在来軸組工法用の部材を売るのとは、ちょっと世界が違う。顧客も全く違うというのが実感だ。

遠藤

具体的にどう違うのか。

今山

2×4工法を手がけるハウスメーカーやビルダーはもう決まっている。地域の工務店は在来軸組工法が当たり前なので、2×4工法には手を出さない。よっぽど大きなハウスメーカーでないと両方の工法をやることはない。マーケットでの住み分けがはっきりしていて、とてもわかりやすい。

遠藤

在来軸組工法でやってきた地域の工務店の現状と今後については、どうみているか。

今山

新設住宅着工戸数や大工など技術者が減少しており、厳しい状況にあることは間違いないが、地域に根差した家づくりへのニーズがなくなることはない。
「宇目工場」を立ち上げた頃は、大分県外に製品を売ることばかり考えて、一時は東北地方にまで販路を伸ばした。だが、運賃負担などの問題があり、今は足元の県内需要も重視するようにしている。

木本部長

2023年に結んだ協定には、大型パネル工法の普及に取り組んでいるウッドステーション(株)(千葉県千葉市)も加わっている。大型パネルを用いることで、現場施工だけでなく、物流プロセスなども省力化できる。当森林組合としても、単に製品を売るだけではなくて、大型パネルなどを加えて顧客のビジネスをサポートすることを考えていきたい。

遠藤

佐伯広域森林組合の製品はマーケットで評判がいいと聞いている。

木本

おかげさまで、製品の売り先はほとんど決まっていて、先の予約も入っている。今は在庫を持たない顧客が大半なので、当森林組合から安定的に納入することの重要性が益々高まっている。

自前のスギコンテナ苗を増やし再造林のコストダウンを図る

遠藤

佐伯広域森林組合の国産材加工能力が全国トップレベルであることは誰もが認めるところだ。そこから得られた利益を森林づくりにどうやって還元していくかを考えたい。その前提として、現在の組織体制などを確認しておきたい。職員数は何人なのか。

戸髙

約160名だ。内訳は、原木市場の担当が19名、工場勤務が62名、一般事務職が40名、バイオマスチップ生産施設勤務が10名、このほか各支所や測量班などで20名以上が働いている。

遠藤

伐出事業は、どのように行っているのか。

今山

組合直営の作業班は1つで4名が配属されており、あとは外部に委託している。素材生産を委託しているのは15班で、合計で40~50名が働いている。外部委託としているが、ほぼ当森林組合専業のようになっている。

遠藤

造林事業はどうやって進めているのか。

今山

造林事業の直営の作業班として1 班の5 名が働いている。直営の作業班は、3 年ほど経験を積めば独立を促し、ここ5 年で10 名以上が請負作業班として独立し活躍している。また、造林事業系の請負作業員として180名から200名くらいが従事している。

遠藤

佐伯広域森林組合は、スギコンテナ苗の生産も行っている。現在の造林事業で使っているスギコンテナ苗のうち、どのくらいが組合産になっているのか。

木本

昨年は約45万本のスギコンテナ苗を植え付け、その半分くらいは組合産で、残りは宮崎県の苗木業者などから購入した。できるだけ近いうちに100%組合産で賄うことを目指している。

今山

当地域の人工林も収穫期に入っており、これから再造林面積はさらに増えていく。だが、森林所有者の負担を軽減する補助金の仕組みは大きくは変わらないだろうし、このまま資材費や人件費が上がっていくと、実質的に再造林できる面積が減っていく恐れがある。これをカバーするためには、再造林のコストダウンをもっと進めていかなければならない。非常に重要な局面に来ている。

佐伯広域森林組合が育てているスギコンテナ苗(画像提供:佐伯広域森林組合)

組合員に貢献し地域を支えるために、森林を守り育てていく

遠藤

最後に聞きたい。佐伯広域森林組合の事業規模は、一般的な森林組合の枠に収まらないレベルになっている。民間企業と伍していける高い競争力を持っていると言えるが、今の“立ち位置”をどのように考えているか。

戸髙

森林組合法の第1条には、「森林所有者の協同組織の発達を促進することにより、森林所有者の経済的社会的地位の向上並びに森林の保続培養及び森林生産力の増進を図り、もつて国民経済の発展に資することを目的とする」と定められている。この目的を達成するために取り組んできた結果が現在の当森林組合の姿になっている。
私が当森林組合の運営で重視していることは、まず組合員への貢献、そして地域に貢献することであり、地域で誇れる森づくりを進めることだ。そのためには人材を結集して、家族も含めて当森林組合に関わる人々が幸せでいられるようにしなければならない。
ここ佐伯市は、市全体が林業地帯であり、1990年に広域合併して発足した当森林組合がしっかりと森林を守り育て、地域を支えていく必要がある。
これが当森林組合の最大の使命であり、「佐伯型循環林業」をさらに推進していきたいと考えている。

(2026年1月21日取材)

(トップ画像=「ツーバイ材加工施設」のモルダー棟の内部)

遠藤日雄(えんどう・くさお)

NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。

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