「佐伯型循環林業」を推進するために不可欠なツーバイ材加工施設
遠藤理事長は、1月21日に佐伯広域森林組合で開催された落成式に来賓として出席した際、ツーバイ材加工施設の真新しい生産ラインなどを一通り視察した。その上で、代表理事組合長の戸髙壽生氏、代表理事専務の今山哲也氏、流通部長の木本博明氏との意見交換に入った。
落成式で挨拶した戸髙組合長の言葉から「佐伯型循環林業」の推進に全力を傾注していることが伝わってきた。1990年の組合設立から36年目に入っている現時点の事業成果などについて、どのように評価しているか。
当森林組合は、旧佐伯市や周辺の町や村にあった6つの森林組合が広域合併して誕生した。戦後の高度経済成長期を通じて、世の中から林業が置き去りにされたような時期が約半世紀も続いているが、その中にあっても当森林組合は地域林業発展のために事業を拡充・強化し、歴史を重ねてきた。

「伐ったら必ず植える」を原則とする「佐伯型循環林業」は、再造林率100%を意味する。全国平均の再造林率が30%~40%に低迷している中で、模範と言える取り組みを続けているわけだが、実行面で課題や悩みはないのか。
「佐伯型循環林業」を推進するためには、山元への利益還元を高めることが欠かせない。このため、素材生産などの事業量を増やし、大型製材工場を稼働させるなど、事業の幅を広げてきた。ただ、再造林した人工林を育成していくためには、下刈り等の保育作業が必要であり、その費用負担が大きい。この課題を解決するために、ツーバイ材加工施設を立ち上げた。
スキャナー・フィンガー・モルダーの3棟で効率生産を目指す
佐伯広域森林組合が2×4住宅向け部材の生産に本格参入したことは、国産材業界全体にとっても大きな出来事だ。改めて、新設したツーバイ材加工施設の全容を教えて欲しい。

ツーバイ材加工施設は、既存の宇目工場に隣接して整備し、3棟の工場棟と2棟の製品保管庫からなる。昨年の5月13日に着工し、11月27日に竣工して稼働を始めた。
3棟の工場棟は、どのような役割分担になっているのか。
まずスキャナーカットラインを備えたスキャナー棟で原板を切断し、寸法を調整する。その過程で、節の多い欠点材などを取り除くようにしている。
続いて、フィンガージョイントラインを設置したフィンガー棟で、そのままでは製品にならないような端材同士をつなぎ合わせて、2×4材として利用できるようにする。
その後、モルダーのあるモルダー棟でかんながけ(鉋掛け)をして製品の断面を平滑に仕上げ、厚さや幅を整えてから出荷工程に送っている。

3つの工場棟は木造で建てられているようだが。
スキャナー棟は、無柱大空間を実現できるATA構法を採用し、大型パネルで施工した。木材使用量は、約55m3となっている。また、フィンガー棟とモルダー棟は、2×4材で建てており、各棟の木材使用量は86m3だ。
工場棟全体の木材使用量は約227m3で、中大規模建築物を木造化するモデル的な工場棟になっている。
大径化する原木(丸太)を有効利用するために生産品目を広げる
ツーバイ材加工施設の新設と合わせて、既存の宇目工場の製材ラインも強化したようだが。
宇目工場には、チッパーや原木投入搬送装置、リングバーカー、帯鋸自動ロール機を導入した。これによって、生産性が大きく向上する。
佐伯広域森林組合の宇目工場は、全国の製材工場の中でもトップクラスの実績を上げてきている。その製材ラインを刷新すれば、今後も十分な競争力を維持できるだろう。しかし、その段階にとどまらずに、ツーバイ材加工施設の新設にまで踏み込んだ理由は何なのか。
大きな要因は、原木(丸太)の大径化が進んできていることだ。戦後植林木の大径化は全国的な傾向であり、ここ大分県でも大径化した原木をいかに有効利用するかが課題になっている。この課題を乗り越えるために、ツーバイ材加工施設をつくって出口(需要先)を広げようという結論に至った。

大径木は、木取りを工夫すれば様々な部材を採れるから、既存の製材ラインを見直すだけでも対応できるのではないか。
大径木から構造材としての梁や桁を効率的に採れれば一番いい。しかし、実際にやってみると、10本の梁や桁をつくって構造材として使えるような強度や含水率を10本揃って担保できるかというと、なかなか難しい。
つまり、大径木から構造材を量産しても、マーケットでは通用しづらいということか。
大径木を有効利用するためには、従来からの生産品目にとらわれずに、2×4住宅用部材などに製材することも必要ではないかと10年ぐらい前から検討していた。ただ、この分野は北米からの輸入材が圧倒的なシェアを占めていて、簡単に参入できるものではなく、チャンスを窺っていた。
そのチャンスが到来しているのか。
いわゆるウッドショックを経て、海外から木材製品を安定的に調達することが難しくなった。円安の進行も輸入コストを引き上げている。
一方で、スギをはじめとした国内の人工林資源は利用期を迎えている。今こそ「佐伯型循環林業」を新たなステージに進めるときだと考え、ツーバイ材加工施設の新設を決断した。(中編につづく)
(2026年1月21・22日取材)
(トップ画像=ATA構法で建てられたスキャナー棟の内部)
遠藤日雄(えんどう・くさお)
NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。