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当面は月産1,000m3で安定稼働を図り、5月頃にはJAS取得の予定
北米で開発された2×4(ツーバイフォー)工法(枠組壁工法)による住宅は、日本国内でも年間に10~12万戸程度が建設されており、底堅い需要がある。柱と梁で構造耐力を支える在来軸組工法住宅とは異なり、2×4工法の住宅は枠組材と合板などの面材が一体となった面構造で耐力を支えている。2×4工法住宅で使用する部材の主体は2インチ×4インチの規格材であり、在来軸組工法住宅と比べると非常にシンプルだ。
北米のアメリカやカナダにおける戸建て住宅の大半は2×4工法で建てられており、ヨーロッパやアジアにも広がっている。2×4工法は、施工性の良さとともに耐震性や断熱・気密性の高さなども評価されており、世界的に普及してきている。
その世界標準とも言える2×4工法用の部材を佐伯広域森林組合が本格的に供給する段階に入ったことは、極めて意義深い。生産量はどのくらいになるのか。
当面は月産1,000m3を目標に安定稼働を目指すことにしている。2×4工法用の部材を生産・販売するにあたっては、JAS(日本農林規格)の認証取得が大前提になるので、所要の手続きを進めている。5月頃には、枠組壁工法構造用製材たて継ぎ材のJAS認証が取得できる予定だ。
モジュールの違いを踏まえた上で、原木の有効活用を目指す
国産材を使って2×4材を生産する際に問題になるのがモジュール(基準寸法)の違いだ。2×4材は、北米の「フィート・インチ」モジュールに基づいており、長さは、3フィート(約910mm)、6フィート(約1,820mm)、8フィート(約2,440mm)などに規格化されている。
これに対して、国産原木の長さは3m材と4m材が標準となって流通している。効率的に2×4材を生産しようとしてもモジュールが異なるのでムダが出てしまうのではないか。
その通りだが、いきなり2×4材のモジュールに合わせて国産原木を集めようとしても現実的ではない。そこで、原木の調達は従来通りに3m材及び4m材とし、2×4材に加工するものは、まずスキャナー棟で2.4mや3.6mにカットしている。そして余った部材は、フィンガー棟でフィンガージョイントして有効活用するという流れにしている。


原木を輸送する際も、トラック自体が基本的に4mの長さで積み込む設計になっているので、2.4mや3.6mの長さの原木では隙間が生じて満載できずコストアップになってしまう。それよりも3m材と4m材で集荷して、既存の製材ラインやフィンガージョイントなどを組み合わせて、原木を余すことなく使い切る方がいい。
使用原木は3m材が6割、4m材が4割、全量を直接仕入れ
佐伯広域森林組合は年間に約11万5,000m3もの原木を消費しているが、3m材と4m材の比率はどうなっているのか。
だいたい3m材が6割、4m材が4割になっている。
国内で流通している住宅用原木の主流は4m材だ。3m材の比率が高いというのは珍しいのではないか。
そうかもしれないが、当森林組合の加工ラインを考えると3m材の割合を高めた方が効率的に生産できる。そこで、3m材を優先的に調達するための工夫を重ねている。
どのような工夫をしているのか。
当森林組合が立木で購入している「買取山」からの月間出材量は8,000~9,000m3あり、その半分は3m材で工場に直納してもらっている。このほかに仕入れる原木についても3m材から手当てするようにしている。
価格面でも、3m材は相場より1,000円程度は高く買うようにして、出荷側にメリットが出るようにしている。
民間の市場などで原木を買うことはないのか。
この3年間で外部の市場に仕入れに出向いたことはない。ありがたいことに原木の調達で困ることはなく、ほぼ全量を直接仕入れている。
「宇目工場」で羽柄材などを生産し、協力工場が大径木を加工
「ツーバイ材加工施設」とともに設備を増強した「宇目工場」における製材加工の現状についても教えて欲しい。主な生産アイテム(品目)は何か。
販売ベースでいうと、4分の1が柱と梁・桁、4分の1が間柱、残りの4分の2が板類となっている。柱・間柱まで含めて全体の4分の3が羽柄材という構成だ。
主な売り先はどこか。
福岡・長崎・佐賀県といった九州北部が6割を占めており、2割は名古屋方面に販売し、残り2割は中・四国地域向けと海外にも輸出している。

「ツーバイ材加工施設」を新設した目的の1つに大径木の有効利用をあげているが、具体的に末口径何cm以上の原木を指しているのか。
30cm以上を大径木としている。「宇目工場」で効率よく製材できるのは30cm以下の原木だ。そこで、30cm以上の大径木は、「ツーバイ材加工施設」で受け入れるようにしている。
また、当森林組合の協力工場として大径木を効率的に製材できるところがあるので連携体制をとっている。
協力工場とは、どういうものなのか。
当森林組合から原木を供給して、製材を委託している工場のことだ。もともとは地域の小規模な製材工場の経営を支える面もあって加工業務を委託することから始まった。数年前に2社と協力関係を持って進めていたら、「うちもやりたい」という話が広がってきて、現在は6社が当森林組合専属の協力工場になっている。

協力工場というネットワークの広がりもできている中で、さらに「ツーバイ材加工施設」の新設という思い切った経営判断に踏み切った理由は何か。
当森林組合として2×4工法用の部材を生産することは10年以上前から検討していた。そして、2023年6月に、ウイング(株)(東京都千代田区)などと建築物木材利用促進協定を締結したことが新規事業を具体化する大きな後押しになった*1。この協定がなければ、ここまでの決断はできなかった。(後編につづく)
(2026年1月21日取材)
(トップ画像=フィンガージョイントされた2×4材)
遠藤日雄(えんどう・くさお)
NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。