「阿蘇南郷檜」の知名度と販路が拡大、ブランド化が進む

「阿蘇南郷檜」の知名度と販路が拡大、ブランド化が進む

熊本県がブランド化に取り組んでいる「阿蘇南郷檜(あそなんごうひ)」*1が知名度と販路を広げてきている。阿蘇南郷檜は、約260年前の宝永年間から阿蘇地域で直挿しによって植え継がれてきたヒノキの挿し木品種。初期成長は遅いが、高齢になっても成長が衰えず、通直完満で特有の固さと香りを持つ良質材が得られる。国内唯一のヒノキ挿し木在来品種に認定されており、苗木は「ナンゴウヒ」として各地に提供されている。

森林ツアーで「阿蘇南郷檜」をPR

同県では、2014年度から阿蘇南郷檜のブランド化事業を進めており、14年5月には地元の7市町村が連携して「阿蘇南郷檜ブランド化推進協議会」(事務局=高森町)が発足、育成技術体系マニュアルの作成や見本林の設定のほか、銘木市への出品や消費者向け森林ツアーなどを通じてPR活動を強化している。

これまでに阿蘇地域の神社や役場、学校、保育園、展示施設、個人住宅などの構造材や仕上げ材として阿蘇南郷檜が使用されており、派生商品として、アロマオイル、化粧水、御守り、キーホルダー、ウッドチップなども誕生している。

熊本県外の住宅でも初使用、大牟田市の徳永産業が“橋渡し”

7月27日には、県外では初めて阿蘇南郷檜を大黒柱などに用いた個人住宅の上棟式が福岡県の大牟田市内で行われた。住宅建材卸流通業者の徳永産業(株)(福岡県大牟田市)が施主と工務店の橋渡し役となり、伐採地を訪れて林家から直接話を聞いたほか、木材乾燥では熊本県小国町の地熱乾燥を用いるなど、優良材の特性を活かしたこだわりの木造住宅となっている。

「阿蘇南郷檜」を使った住宅の建築が進む

徳永産業の担当者は「(阿蘇南郷檜は)材質の良さだけでなく、関係者の熱意や、“ご神木の分身”というストーリー性もあってプレミアム性が高い。何よりも林家の手で長い年月をかけて丁寧に育まれており、構造材利用に適した木材ができあがっている」と評価しており、ブランド化推進協議会も「阿蘇南郷檜をさらに普及させるには生産性を見直す必要があるが、引き続き“郷土の宝”として育成と利用を進めていきたい」と意欲をみせている。

『林政ニュース』編集部

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