中高層建築物の木造化を可能にする新しい木質材料として注目されている「超厚合板」の開発と実用化に向けた事業成果報告会が3月1日に開催された。日本合板工業組合連合会が主催し、東京都内の会場とオンラインを併用して行ったところ、当初予定の定員を上回る約150人が参加し、関心の高さを窺わせた。
超厚合板は、米国オレゴン州のフレール社がCLTの代替材料として開発し、北米ではMPP(マス・プライウッド・パネル)として普及してきている。ラミナ(挽き板)を利用するCLTよりも合板(単板)を使う超厚合板の方が歩留まり率が高く、品質も安定するなどのメリットがある。
報告会では、東京大学木質材料学研究室准教授の青木謙治氏と森林総合研究所複合材料研究領域長の渋沢龍也氏が講演し、日本で超厚合板を開発・実用化していくための課題などを整理した。
青木氏は、米国における超厚合板の製造ラインについて、フックドスカーフジョイントで厚物合板をたて継ぎ加工した後、メラミン樹脂接着剤で積層接着(2次接着)していることなどを説明。日本では、LVLの単板でのたて継ぎは可能だが、製品のたて継ぎはLVLでも合板でも認められていないため、「これが必ず問題になってくる」と指摘した。また、米国は厚物合板の単板構成が特殊で9層構成のうち直交層は2層だけとなっており、「JAS(日本農林規格)では読めない」ことも問題点にあげた。
渋沢氏も超厚合板を開発する技術はあるが、日本で実用化していくためには、JASや建築基準法の中で基準強度などを規定していく必要があると述べた。
米国で採用事例が増えている超厚合板をそのまま“輸入”することは難しいが、大型ビルの木造・木質化などに対応していくためには、日本版超厚合板の開発が欠かせない。報告会では、林野庁の補助事業を利用してスギ単板を積層接着し強度や曲げ性能などを試験したことも紹介された。
米国では超厚合板の断面に防水塗料を塗って工事現場の敷板として利用することも検討されており、今後、建築以外の用途が広がる可能性もある。日合連は、引き続き超厚合板の実用化に向けた研究開発事業を行っていくことにしている。
(2021年3月1日取材)
(トップ画像=米国で実用化されている「超厚合板」)

『林政ニュース』編集部
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