「2024林業機械展示実演会」開催、自動化・無人化を競う【見所拝見!】

「2024林業機械展示実演会」開催、自動化・無人化を競う【見所拝見!】

「恐竜王国」の福井県で「2024森林・林業・環境機械展示実演会」が10月20・21日に開催され、約80社が出展し、2日間で約1万9,000人が訪れた。林業機械化の最新トレンドは、自動化・無人化の追求であり、遠隔操作技術などを駆使した最新マシンが目立った。その中から見所をお伝えする。

業界初のラジコン式伐倒作業車「シン・ラプトルⅡ」デビュー

実演会の開催地は、福井駅からバスで約70分を要する「スキージャム勝山」(勝山市)。会場内で来場者がまず足を運んだのは、松本システムエンジニアリング(株)(福岡県篠栗町)のブースだった。

同社が出展したのは、業界初のラジコン式伐倒作業車「シン・ラプトルⅡ」。全長4,150mm、全高2,100mm、全幅2,400mmと小型フォワーダのようなサイズで、車体後部にスイング可変式アシストウインチが備わっている。

「シン・ラプトルⅡ」、販売予定価格は約3,800万円

同機の特長は、①最大切断直径60cm、②ユニーバサル伐倒、③自動走行の3点。

①ハーベスタのように最大直径60cmまでの立木が伐倒でき、②ユニーバサル伐倒と名づけた機能によって車体の前後左右10度の傾斜に自在に対応し、上り30度・下り45度までの傾斜地でも伐根高さを20cmに揃えることができる。

③車体は一度走行した位置を記録しており、伐倒木を自動で集材した後、次のポイントまで自動で向かい、遠隔操作で伐倒する。これら一連の作業を何度も繰り返すことができる。

同社の松本良三社長は、「(この機械を)フル稼働させれば、年間1万m3以上の伐出ができる。生産性と安全性の飛躍的な向上に貢献できる」と説明した。

最大12ⅿまで伸びるアームを備えた「プラテオ」

同社のブースでは、中部電力パワーグリッド(株)(愛知県名古屋市)と共同開発した「プラテオ」も並べた。最大12ⅿまで伸びるアームを使って、電線や家屋に倒れ込んだ倒木などを掴み、取り除くことができる。実演では、アームの圧倒的な長さが来場者の視線を釘付けにしていた。

VR架線集材シミュレーターが進化、搬送作業をリアルに再現

イワフジ工業(株)(岩手県奥州市)は、グラップルやプロセッサなどとともに、架線集材システムのシミュレーターを展示した。操作機、VRヘッドセット、ゲームコントローラーの3つからなり、誰でも架線集材作業を疑似体験でき、トレーニングなどにも利用できる。

架線集材システムのシミュレーター

このシミュレーターはすでに販売されているが、今年度(2024年度)の開発でAI(人工知能)機能等を取り入れて改良を加え、伐倒木を荷下ろし土場の手前まで自動で搬送する作業をよりリアルに再現できるようになった。同社は、11月13日(水)に和歌山県内で見学&体験会を開催することにしている。

燃料用チップの需要増を受け木質バイオマス利用システムを再提案

(株)諸岡(茨城県龍ケ崎市)は、枝条などを積載するバイオマス対応型フォワーダ、荷台着脱式フォワーダ、自走式投入型木材粉砕機などの木質バイオマス利用システムを提案した。

荷台着脱式フォワーダ
自走式投入型木材粉砕機
バイオマス対応型フォワーダ

同社は、十数年前に木質バイオマス用の機械を開発・販売していたが、あまり日の目を見ることがなく倉庫に眠っていた。

しかし、最近の燃料用チップへのニーズの高まりを受けて、既存のマシンを整備し直し、改めてお披露目した。担当者は、「一連のシステムを導入すれば無駄なく森林資源を活用できるようになる」と強調した。

大手建機メーカーが最新の遠隔操作技術を林業分野に導入

会場内では、大手建機メーカーによるベースマシンの遠隔操作も実演された。

コベルコ建機(株)(東京都品川区)は、2022年に販売開始した遠隔操作システム「K-DIVE」を持ち込んだ。「K-DIVE」を林業分野の展示会に出展したのは初めて。

「K-DIVE」のコックピット
「K-DIVE」を搭載した重機

コックピットには、実機に搭載したセンサーから振動や傾きなどが伝わり、オペレーターは現場にいるような感覚で操作できる。1台のコクピットで複数台の重機を操作することも可能。想定している主な使用フィールドは、通信環境が整備されているストックヤードなどで、今後、土木現場などを中心にサービスを拡げることにしている。

住友建機(株)(同)は、住友商事(株)(千代田区)が総代理店をつとめる北京拓疆者智能科技有限公司(中国北京市、以下「BuilderX」と略)の遠隔操作システムを披露した。

BuilderX社のコックピット
BuilderX社の遠隔操作システムを搭載した重機

BuilderXの遠隔操作システムは、中国国内で100台の導入実績があり、鉱山や港湾などで使われている。実証実験では約、1,700km離れた遠隔操作を実現すたという。住友建機の担当者は、「通信環境を構築できれば林内でも利用できる。来年にはカスタマイズを施して販売する」と話している。

ハイドロチック・モアに根株用チェンソー、植え付け用アタッチメントも

グループ会社に素材生産会社を持つ筑波重工(岩手県洋野町)は、ラジコン式造林機械「ハイドロチック・モア」のバージョンアップを重ねている。

「ハイドロチック・モア」

機体後部に根株処理用のチェンソーを付け、走行時に障害となる根株を10秒程度で処理できるようにした。来春には植え付け用のアタッチメントを装着し、約1分間で4本の苗木の植え付けが可能になる。

同社は全開発費を自社で賄っており、現場実証はグループ会社の筑波フォレスト(同)が担っている。来年には約20haの植林が控えており、約50万本の苗木も自社で栽培して備えている。小田直樹・筑波重工社長は、「自ら実践し造林の機械化を広げていく」と意欲をみせている。

飛行機のようなドローン、1フライトで最大300haの測量が可能

山陽商事(株)(兵庫県伊丹市)のブースでは、飛行機のようなドローン「エアロボウィング」が存在感を放った。エアロセンス(株)(東京都北区)が企画・製造する垂直離着陸型固定翼ドローンで、飛行距離が長く、1フライトで最大300haの測量が可能だ。

1フライトで最大300haの測量ができる「エアロボウィング」

砂防施設や河川、道路の点検などで導入実績が増えてきており、担当者は、「通常のドローンでは難しいが航空機を飛ばすほどではない面積の測量に向いている。J-クレジット用の測量などに活用して欲しい」とアピールした。

出展見合わせのサナース、「林業機械は変わらずに取り扱う」

新機種が並ぶ会場内で意外だったのは、(株)サナース(神奈川県横浜市)のブースがなかったこと。同社は、オーストリアの機械メーカー・KONRAD(コンラート)社などの輸入代理店をつとめており、実演会の常連組だ。ただ、5月31日付けでリサイクル事業や産業廃棄物処理事業を手がけるサイクラーズ(株)(東京都大田区)の完全子会社となり、業務内容や体制の見直しに着手している。

担当者に電話取材すると、「コストカットの一環で実演会への出展は見合わせたが、林業機械はこれまでと変わらずに取り扱っていく」とのことだった。

(2024年10月20日取材)

(トップ画像=伐倒実演する「シン・ラプトルⅡ」

『林政ニュース』編集部

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