DX化を推進し、「集材・造材マルチワークシステム」に注力
東北自動車道の奥州スマートインターチェンジを降りてすぐの場所にあるイワフジ工業の生産拠点は、戦後に建設されたのこぎり屋根の工場だ。老朽化が進んできたため、建て替えが検討されている。工場の刷新を視野に入れながら、有吉実社長は、「DX化を進め、生産性を向上させていきたい」との抱負を口にした。
その第1歩として、タブレット端末(iPad)を使って製造管理に必要な書類のペーパーレス化を進めている。また、管理部門では、表計算ソフト(Excel)を活用して集計作業を自動化し、従来の業務時間を3分の1に短縮した。
身の回りからデジタル化を進めて社内に“余力”をつくり出しながら、中核事業である林業機械の開発については、人手不足が進み伐採地が奥地化している実態を踏まえ、「数年前から重点課題にしている『集材・造材マルチワークシステム』の開発に注力する」(有吉社長)方針だ。同社は、国(林野庁)の先進的林業機械緊急実証・普及事業の助成を受けながら、同システムの実用化を目指している。
具体的には、カメラとAI(人工知能)エッジコンピューターを搭載した架線式グラップルに油圧集材機を組み合わせて集材作業を効率化する。機械の操作はプロセッサのオペレーターが行い、集材から造材までを1人でこなすことで省力化が図られ、安全性の向上も期待できる。
グラップル、プロセッサ、フォワーダが売れ筋、売上高96億円
イワフジ工業は、本社のほか全国8か所に支店を構えている。従業員は約300名で、工場部門に約200名、営業部門に約60名、開発部門に約30名、総務部門に約10名が在籍している。昨年(2022年)の年間売上高は約96億円で、自社製の林業機械や部品などの販売が主たる収益源となっている。
同社は、14種類の林業機械を揃えており、とくに売れ筋となっているのが、グラップル、プロセッサ、フォワーダだ。この3機種で販売台数の約9割を占めている。
グラップルは、通常タイプに加えて、選木専用や造林の地拵え用、林地残材処理用などの特殊グラップルも用意している。
プロセッサには、材積集計アシストを搭載しており、造材した丸太の種類や本数などをUSBメモリに保存して、管理・集計の効率化につなげている。
フォワーダには、特定特殊自動車排出ガス2014年基準に適合したエンジンを装備し、排出ガス中の窒素酸化物を大幅に削減できるシステムとなっている。
このほか、最近は小型ハイパワーマシンの人気が上昇中だ。このマシンは、車幅が2m以下の建機に12tクラスのアタッチメントをつけたもので、幅員が狭い森林作業道でも間伐などをスムーズに行えることがウリとなっている。
中島飛行機がルーツ、「革新的な林業機械を開発・製造する」
林業機械一筋のイワフジ工業のルーツは、自動車メーカー・(株)SUBARUなどの母体にもなった中島飛行機(株)だ。1917(大正6)年に発足した中島飛行機は、航空機・航空エンジンの専門メーカーとして、第2次世界大戦が終わるまで軍用飛行機を開発・製造してきた。
終戦後、1950年にGHQ(連合国軍総司令部)から軍需企業として解体が命じられ、12社に分社。そのうちの1社である岩手富士産業(株)がイワフジ工業の前身になる。
岩手富士産業は、軍用飛行機の製造で培った技術を林業に役立てるため、林業用ウインチや国内初のクローラタイプのトラクタ、ミニバックホーなどを開発し、1980(昭和55)年にイワフジ工業に社名を変更した。
その後も様々な林業機械を世に送り出し、2007(平成19)年に会社分割を行って現在のイワフジ工業となり、新明和工業(株)(兵庫県宝塚市)のグループ会社となった。
有吉社長は、老舗機械メーカーを率いるにあたって、「創業時から続く精神と技術を受け継ぎながら最先端の技術を取り入れ、革新的な林業機械を開発・製造していく」との決意を内外に語っている。とくに、「自動車の自動運転技術など様々な分野にもアンテナを張って、林業機械の自動化などに応用していく」ことに力点を置き、開発のスピードアップを図ることにしている。
(2023年6月22日取材)
(トップ画像=イワフジ工業の本社工場の内部)
『林政ニュース』編集部
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