田島山業がLINEヤフーにCO2を販売 年1,500tを継続、飯野海運とも契約

田島山業がLINEヤフーにCO2を販売 年1,500tを継続、飯野海運とも契約

大分県日田市の田島山業(株)(田島信太郎・代表取締役社長)は、同社が経営・管理している森林が吸収する二酸化炭素(CO2)をクレジット化して大手企業に販売する事業を本格化させた。

10年以上にわたるJ-クレジット売買契約を結んだ田島山業の田島信太郎社長(右)とLINEヤフーの西田修一執行役員

2月15日に、国内最大級のIT企業であるLINEヤフー(株)(東京都千代田区)との間で、毎年1,500tのCO2吸収量を10年以上売買する契約を締結。また、海運業と不動産業を営む飯野海運(株)(東京都千代田区)とも、複数年にわたってCO2吸収量を取り引きする契約を結んだ。両社は、購入したCO2吸収量をカーボン・オフセットなどに利用して、温暖化防止や脱炭素化に活用する。

J-クレジットの販売強化で売り上げ2倍へ、管理森林増やす

田島山業は、日田市中津江村を中心に、受託分も含めて約1,200ha(東京ドーム260個分)の森林を経営・管理しており、森林が吸収したCO2量を国が認証するJ-クレジットにして販売している。森林由来のJ-クレジット保有量(年間創出量)は、民間企業では国内6位となる4,000t余りに達している。

約800年前の鎌倉時代から林業を営んでいる同社は、「伐ったら植える」施業を徹底しており、再造林率は100%(全国平均は30%)を維持し、広葉樹の植林面積も50haと全国トップクラスを誇る。

同社によると、国内で1,000ha以上の森林を所有・管理し、林業のみで生計を立てている「専業林家」は10社未満にとどまる。立木価格の低迷が続く中で、森林由来J-クレジットの販売が広がっていけば、山元への新たな資金還元ルートができることになり、関係者の期待と注目度は高い。同社は今後も森林由来J-クレジットの販売を進め、今年(2024年)12月決算では、前年(2023年)の2倍にあたる1億2,000万円の売り上げを見込んでいる。

今後に向けて、田島信太郎社長(67歳)は、「未整備森林が増えていることに対する危機感が高まっており、相続などを契機に所有林の管理を請け負って欲しいという依頼をいただくことが増えている」とし、「防災等の観点からも管理の難しくなった地域の森林を引き受けていきたい」と意欲をみせている。

なお、J-クレジットの販売では、カーボン・クレジット市場や仲介業者を利用する方法もあるが、同社は企業と直接取引することを基本にしている。その理由について、田島社長の長男で同社の統括本部長である田島大輔氏(35歳)は、「直接取引のメリットは、購入企業と顔が見えるつながりができ、密な連携が図れること。自然資本を守る活動を多くのパートナーと連携して進めていきたい」と話している。

(2024年2月15日取材)

(トップ画像=田島山業の所有林、画像提供:同社)

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしていきます。

この記事はフリー会員記事(1217文字)です。
フリー会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。