「バイオ炭」のクレジット販売目指す 日本クルベジ協会が丸紅などと市場開拓

「バイオ炭」のクレジット販売目指す 日本クルベジ協会が丸紅などと市場開拓

木材や竹などからつくられる「バイオ炭」を温暖化対策に活用する動きが出てきた。国のJ-クレジット制度で「バイオ炭」の二酸化炭素(CO2)貯留量を売買することが認められており、新たな炭素ビジネスとして広がる可能性がある。

一般社団法人日本クルベジ協会(大阪府茨木市、柴田晃代表理事)は8月9日、同協会が保有する「バイオ炭」のクレジットについて丸紅(株)(東京都千代田区、柿木真澄社長)との間で独占販売代理権の契約を結んだと発表した。同協会は、6月30日に開催されたJ-クレジット制度認証委員会で、「バイオ炭の農地施用」として247t(CO2換算)のクレジット認証を受けた。「バイオ炭」のクレジットを取得したのは国内初となる。

同協会事務局によると、すでに10社程度とクレジットの売却に向けた手続きに入っており、丸紅には約10tを販売する予定。これに加えて丸紅は、独占販売代理権契約に基づいて約150tのクレジットを引き受け、総合商社の販路を活かして企業等への売却に取り組む。販売価格については、t当たり5万円以上を目安にしている。すでに取引が行われている森林吸収クレジットと比べると3~5倍の高価となり、生産者らへの還元額を増やせるとみられる。

「バイオ炭」は、「燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物」と定義され、土壌改良資材として利用できる。温暖化対策の国際基準となっているIPCCガイドラインの2019年改良版で「バイオ炭」を農地に用いると炭素貯留効果があると認められ、翌20年9月にはJ-クレジット制度でもクレジット発行対象に追加された。

全国各地から「バイオ炭」を調達、林業分野への拡大に期待

「バイオ炭」のクレジット販売に先陣を切って取り組んでいる日本クルベジ協会は、同協会内に事務局を置く日本バイオ炭普及会(JBA)が品質証明をした「バイオ炭」を農業者らに販売するとともに炭素貯留量をまとめてクレジット化し、同協会内の「炭貯クラブ」にストックした上で、企業等に売却する仕組みをとっている。

同協会が「バイオ炭」で初のクレジット認証を受けた247tの調達先(生産地)は18道府県に及んでおり、調達量の約7割は林業が盛んな北海道の下川町が占めている(トップ画像参照)。

現在、J-クレジット制度では、「バイオ炭」の「農地施用」だけをクレジットの認証対象としているが、関係者の間からは林地の改良など森林・林業分野での利用にも認証範囲を広げて欲しいとの要望が出ている。林産物である木炭の生産量は減少傾向にあるが、高品質な「バイオ炭」の“脱炭素価値”が広く評価されるようになれば、“木炭復活”への追い風となる可能性がある。

(2022年8月9日取材)

『林政ニュース』編集部

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