林業と狩猟を両立させて“山の恵み”を活かす中津造林【突撃レポート】

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林業と狩猟を両立させて“山の恵み”を活かす中津造林【突撃レポート】

年々増加するシカによる森林被害。2014年を境にシカの個体数は減少傾向にあるが、生息域は拡大しており、2021年度のシカによる全国の森林被害面積は約3,500haに広がっている(林野庁資料)。植栽木に対するシカの食害は再造林を困難にし、林業経営意欲を萎えさせる。成林地でも食害によって下層植生が衰退し、土壌が流出するなどの災害を引き起こしている。シカ害を食い止めるために、ゾーンディフェンスやパッチディフェンスの手法を取り入れた防護柵の設置や、忌避剤の散布などの“守り”の対策がとられているが、これだけでは不十分だ。やはりシカの個体数そのものを減らす“攻め”の対策が欠かせない。

大分県宇佐市の中津造林(有)(衛藤正明社長)は、この“攻め”の対策を担う林業会社として関係者から一目置かれている。造林事業や素材(丸太)生産事業などを行う傍ら独自に「認定捕獲班」(以下、「捕獲班」と略)を編成し、森林管理署や自治体などからシカの捕獲事業を請け負っている。林業と狩猟の両立に取り組む同社の近況をレポートする。

目の前のシカ害を放置することはできない、年約800頭を捕獲

「シカによる樹皮剥ぎは、育ててきた木、とくに最も値打ちのある元玉の価値を一気に下げる。林業会社を経営していて、目の前のシカ害を放置しておくことは到底できなかった」──中津造林の衛藤正明社長はこう話し、「自分達でシカを獲るしかないと考えた」と捕獲班を立ち上げた理由を語る。衛藤社長は、自ら猟銃を扱う猟師でもある。

衛藤正明・中津造林社長

捕獲班を持つ同社は、7年ほど前から森林管理署や県、市町村などからシカの捕獲事業を請け負っており、年間の捕獲数は約800頭に達している。猟期となる11月から3月の間は、ほぼ毎日、捕獲班のメンバーも山に入り、ワナや猟銃を使った狩猟を行っている。

捕獲班の活動エリアは大分県内に限らない。他県にも足を運び、山奥に行くこともあれば、人里に近い場所に出向くこともある。衛藤社長は、「シカ害対策で悩んでいる自治体などからの依頼が多い。他県でも猟師が少ないような地域に足を運んでいる」と言う。

同社...

『林政ニュース』編集部

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