花粉症対策の抜本的強化へ、閣僚会議新設 岸田総理のトップダウンで「結果を出す」

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花粉症対策の抜本的強化へ、閣僚会議新設 岸田総理のトップダウンで「結果を出す」

   

政府は、新たに「花粉症に関する関係閣僚会議」を設置し、4月14日に初会合を首相官邸で開催した。同会議には、岸田文雄総理大臣、松野博一官房長官をはじめ農林水産、環境、文部科学、厚生労働、経済産業、国土交通の各大臣が出席。松野官房長官がトップとなり、スギやヒノキなどの花粉発生の抑制や飛散予測の精度向上、効果的な予防・治療法などについて総合的に検討することとし、岸田総理は6月に向けて包括的な対策をまとめるよう指示した。

花粉症には国民の3~4割が罹患しているとされ、経済的な損失も大きいとみられている。岸田総理は、4月3日の参議院決算委員会で、自民党の山田太郎氏から「花粉症撲滅となれば首相の名前を歴史に残すことができる」と促されたのに対し、「(花粉症は)社会問題と言っていいような問題と認識している。政府においても関係閣僚会議を開催し、情報共有や効果的な対策の組み合わせに取り組んでいく。ぜひ結果を出したい」と答え、省庁横断で対策づくりを急ぐ姿勢を示した。

“寝耳に水”だがやらねばならない、花粉の出ないスギ増やす

岸田総理のトップダウンで「花粉症に関する関係閣僚会議」が動き出したが、関係省庁とっては“寝耳に水”で、具体的にどのような成果を出せるかはまだ見えていない。

岸田総理が同会議の新設を表明した翌日(4月4日)の記者会見に臨んだ野村哲郎農林水産大臣は、「びっくりした」と率直に述べた上で、「総理がおっしゃった以上は関係閣僚会議をやらなければいけない」とし、「原因としては確かにスギ花粉が多いわけだから、我が省としては、林野庁中心に花粉の出ないスギの苗を全面的に広げていく。また、花粉症緩和米の実用化にも取り組んでいく」と語った。

政府は、1990年に「花粉症に関する関係省庁担当者連絡会議」を設置して、情報共有等を図りながら、省庁ごとに様々な対策を講じてきている。すでに「やれることはやっている」(関係者)のが現状であり、対策を上積みしていくためには一段と知恵を絞る必要がある。

林野庁は、「伐って利用」、「植え替え」、「出させない」の3本柱からなる花粉発生源対策を進めており、①スギ・ヒノキ人工林の伐採と利用の促進、②無花粉・少花粉品種等への植え替え、③スギ花粉飛散防止剤の実用化に取り組んでいる。

花粉の少ないスギ苗木の生産量については、2020年度時点で約1,393万本にまで増加し、全スギ苗木生産量に占める割合は約5割となっている(トップ画像参照)。この割合を2032年度までに約7割に引き上げることを目指しているが、閣僚会議の新設を踏まえ、数値目標の上方修正などを検討することも必要になりそうだ。

(2023年4月14日取材)

『林政ニュース』編集部

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