山形県森林研究研修センター(寒河江市)が整備を進めていた「閉鎖型採種園」*1が昨年(2024年)12月に完成し、稼働を始めた。花粉が少なく成長が早いスギ品種の「特定母樹」に由来する苗木を増産する拠点となる。
閉鎖型採種園は、鉄骨ビニールで覆われた温室1棟で、広さは126m2。全面に防草シートを敷設するとともに、温度センサーと連動した天窓自動開閉装置やミストかん水設備、運搬用レールを導入しており、作業の省力化が図れる。また、温室の側面には融雪用パイプを設置して、冬季の除雪作業を軽減できる設計とした。工事費は約1,916万円で、林野庁の「林業・木材産業国際競争力強化総合対策」(2023年度補正予算)を活用した。
園内には、収穫コンテナに植栽された親木となるスギ特定母樹の苗木200本が配置されており、採種量は苗木20万本分にあたる年5㎏を見込んでいる。2年後の2026年10月の初採種を計画しており、種子は主に県内の苗木業者に出荷する。
特定母樹は農林水産大臣が指定する品種で、従来のスギ品種に比べて、①花粉の発生量が半分以下、②成長の早さが1.5倍以上、③強くて良質な材質──などの特長があり、成長の早さから下刈り回数の削減や二酸化炭素(CO2)の吸収量の増加などが期待できる。
2023年度末時点で、山形県は全国で3番目に多い14品種に及ぶ特定母樹の指定を受けている。同県内に閉鎖型採種園ができたのは初めて。また、特定母樹のコンテナ方式での育成は東北初となる。
稼働開始後、関係者らの視察が相次いでおり、今後は採種園を活用した林業種苗や特定母樹に関する研修会なども開催していくことにしている。
同センターの担当研究員は、「新しい施設で採種の生産性を高めて良質なスギを増産し、花粉症の軽減や林業振興、地球温暖化の抑制などにつなげたい」と話している。
(2025年1月8日取材)
(トップ画像=閉鎖型採種園の外観)
『林政ニュース』編集部
1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしてまいります。