施行から5年たったクリーンウッド法をどうする?【緑風対談】

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2017年5月に制定・施行された「クリーンウッド法」が見直しの時期を迎えています。同法が目的としている合法木材を担う登録者数や登録件数が頭打ちとなっている中、反転攻勢は可能なのでしょうか。「緑」と「風」が同法の問題点などを解説します。

「合法伐採木材等の流通・利用検討会」が点検作業を進める

違法伐採や無断伐採に関するニュースが依然として後を絶たない。合法的に伐採された木材(以下「合法木材」と略)を使うのは至極あたり前のこと。それが未だに徹底されないとなると、林業・木材産業界全体の信用を失いかねない。何とか抜本的な対策はできないものか。こう気を揉んでいる業界人も多いだろう。
どうやら、その好機が訪れている。2017年5月に制定・施行された「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」、通称「クリーンウッド法」が見直しの時期を迎えているのだ

議員立法で誕生したクリーンウッド法は、「施行後5年を目途に法律の施行の状況について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」(要旨)と附則に明記した。今年(2022年)がその「5年後」にあたるのだ。
このため林野庁は、昨年9月に「合法伐採木材等の流通及び利用に係る検討会」(座長=立花敏・筑波大学生命環境系准教授)を設置。業界団体や環境NGO等から幅広く意見を聞きながら、今後の対応方針策定を睨んで、点検作業を重ねてきている。
今年になって1月13日には7回目の会合を開き、主要な論点を整理。あとは3月の中間とりまとめを残すだけという最終コーナーに入っている。
そこで、クリーンウッド法を巡る最新状況と課題について、要点を簡潔にお伝えしていこう。

“良貨”が“悪貨”を駆逐する法律だがプレーヤーは増えず

まずクリーンウッド法の概要についておさらいしておく。ポイントは、違法木材に関わる事業者を厳しく罰するといった規制法ではなく、合法木材を取り扱う事業者を増やして、結果的に違法な木材を締め出していくというポジティブアプローチの法律となっていることだ。その背景には、「違法伐採」に関する国際的な合意がなく、ハードな罰則規定は日本の法制度になじまないと解釈されたことがある。

要するにクリーンウッド法は、“良貨”が“悪貨”を駆逐するようにして合法木材の流通量を増やしていくことを目的にしている。このため、“良貨”にあたる合法木材を担う事業者を登録し、メリット措置を与えて、その取り組みを後押ししている。具体的には、林野庁の補助事業を利用する際の助成率嵩上げや、国有林材販売事業における公募審査での加点などが適用されている。

登録実施機関別の登録事業体数

さて問題は、このようなスキームのメインプレーヤーである登録事業者による登録件数がどのくらいになっているかだ。トップ画像に示したように、その数は昨年(2021年)7月末時点で562件。率直に言って少ない。しかも、近年は増え方が鈍化している。
また、登録事務などを行う「登録実施機関」も、2018年11月に北海道林産物検査会が追加されて以降は増えていない。
つまり、頭打ちの状況になっているのだ。

メリットが少なく、既存制度との整合性など課題山積だが…

なぜ登録事業者や件数が増えないのか。原因ははっきりしている。メリット=うま味が少ないからだ。林野庁が行ったクリーンウッド法定着実態調査(2019年度)によると、登録を行わない理由として、「自社製品のアピールになるとは考えにくい」と「メリットが得られるとは考えにくい」の2つが抜きん出て多かった。

森林認証材についても言えることだが、合法木材だからといってプレミア価格がつくようなマーケットができているわけではない。登録手数料を支払って合法木材のお墨付きを得ても、それでオシマイというのでは駆動力が出てこないだろう。

他の類似の制度、とりわけ国の物品調達に関わるグリーン購入法との関係がわかりにくいという問題もある。同法では、「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」を定めている。これを遵守している事業者にとって、クリーンウッド法の仕組みに乗ることは“屋上屋(おくじょうおく)”に感じられるのではないか。これは法制定時から指摘されていたことだ。

クリーンウッド法が合法性確認の手法として導入したデューデリジェンス(DD)についても戸惑いがみられる。事実上、運用は事業者の自主性に委ねられており、取り組みにバラツキがあることは否めない。検討会のヒアリングでも、DDの手順や判断基準について国が雛型や大枠を示して欲しいという要望が出ていた。

こうみてくると、クリーンウッド法の見直しは課題山積といえる。だが、「5年後」のタイムリミットが来ているだけに、何らかの対応策は示さなければならない。3月中旬に予定されている検討会の中間とりまとめが注目される。
その後、法改正作業に進むことも考えられるが、担当官は、「まだ何とも言えない」と慎重な口ぶりだ。運用面の手直しで実効性を高めるという手もあるが、どのような推移を辿るのか、引き続き注視していこう。

(2022年1月13日取材)

(トップ画像=登録木材関連事業者の登録件数の推移)

詠み人知らず

どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。

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