林野庁は、脱炭素化対策の一環として、森林に由来する「クレジット」の利用を拡大する新たな案をまとめた。現行のJ-クレジット制度では対象外となっている再造林による二酸化炭素(CO2)吸収量や伐採木材製品中の炭素固定量を算定(カウント)する内容で、従来にない「大胆な提案」(森林利用課)となっている。
国が運営しているJ-クレジット制度では、いわゆる「森林クレジット」の利用が低位にとどまっており、テコ入れが課題となっている。昨年(2021年)8月に同制度運営委員会でレーザ測定によるモニタリングが認められるなどの見直しは行われているが、制度設計自体が難しく取り組みづらい面がある。
林野庁が新たにまとめた「森林クレジット」の利用拡大案は、昨年12月2日に開かれた同制度運営委員会で報告された。内容は、①1990年4月以降施業が行われていない人工林で新たに間伐を実施する場合は追加性を認めるなど要件を緩和する、②主伐に伴うCO2排出計上を再造林によるCO2吸収で控除できるようにする、③伐採木材製品中の炭素固定量を長期的(50~100年)に評価してクレジット化する、④プロジェクト区域内の天然林のCO2吸収量も算定対象とする──の4点。このうち②は、京都議定書で定められた国際ルールの見直しを求めるもので、「かなりハードルは高い」(関係者)。③も、廃棄時にはCO2を排出する木材製品の寿命をどうみるか難しい評価が迫られることになる。これまでになく踏み込んだ提案であるだけに、同制度運営委員会での議論の行方が注目される。
(2021年12月5日取材)
『林政ニュース』編集部
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