(前編)井上篤博・セイホク社長が構想する新戦略【遠藤日雄の新春対談】

(前編)井上篤博・セイホク社長が構想する新戦略【遠藤日雄の新春対談】

新しい年・2025年がスタートした。林業・木材産業界でも全国各地で新年会などが催され、トップリーダーらが事業の発展に向けて意見を交わし合っている。ただ、国産材を取り巻く状況は混沌としている。コロナ禍以降、ウッドショックによる木材価格の急騰や急落に振り回され、外材の供給不安が続いており、歴史的な円安もあって原材料コストなどの負担が増している。国産材の主たる売り先である住宅市場は、国内人口の減少によりシュリンク(縮小)の過程に入った。このため経営者らは難しい舵取りを迫られており、その手腕を問われる正念場を迎えている。
そこで遠藤日雄・NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長は、合板業界のトップリーダーである井上篤博・セイホク(株)代表取締役に将来への展望を聞くことにした。井上社長は、日本の合板業界を代表するセイホクグループを率いるとともに、日本合板工業組合連合会の会長も2004年からつとめ続けている。その井上社長の視界に、未来はどのように映っているのか。遠藤理事長が率直に問いかける。

製材品と比べ合板の価格はなだらかに上下動、時間軸が違う

井上社長と遠藤理事長が直接向かい合って対談するのは、2015年の1月以来となる。当時、井上社長は合板業界の若きリーダーとして、原料の国産材シフトや新製品の開発、新規需要の獲得などに率先して取り組んでいた*1*2。その姿勢は今も変わらないが、この間に経営者としての経験値を高め、業界内での存在感が一段と増してきている。

2人は、前回と同じく東京都文京区のセイホク本社7階にある社長室で話を始めた。

遠藤理事長

この約10年間で、国産材業界は大きく揺れ動いた。とくに、ウッドショックによって、業界のいい面と悪い面があぶり出された感がある。住宅需要の減少も相俟って、再編と淘汰の時代に入ったとも言える。合板業界の現状はどうか。

遠藤日雄(えんどう・くさお)

NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。

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