青山豊久・林野庁長官に就任の抱負を聞く

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青山豊久・林野庁長官に就任の抱負を聞く

7月4日付けで林野庁長官に就任した青山豊久氏(昭和63年入省・東大法卒、58歳*1)は、7月27日に就任記者会見に応じ、当面する課題や対応方針などについて持論を語った。

最重点課題は花粉症と森林環境税、「バランスのとれた議論を」

事務官長官の青山氏は、着任してから連日のように各課から現下の業務課題などに関する説明を受けている。2015年8月から翌16年6月まで林政課長をつとめているので林政の基本的な枠組みは理解しているが、直近の状況などに関しては知見をアップデートする必要がある。

青山豊久・林野庁長官

その青山長官は、当面の最重点課題として、花粉症と森林環境税をあげた。

花粉症については、岸田総理がトップダウンで抜本的対策を講じる方針を打ち出し*2、関係閣僚会議が「花粉症対策の全体像」を決定して*3、年末には「林業活性化・木材利用推進パッケージ」を策定することになっている。

自身も花粉症の青山長官は、「成熟したスギ林が原因とされており、国民病とも言われている。林政の失敗と言われてもやむを得ない側面があり、林野庁の仕事として花粉発生源対策にしっかりと道筋をつけていく」と強調した。

また、「医食同源」*4をライフワークにしていることを背景に、「林政の範囲からは外れるが」と断った上で、「花粉症のようなアレルギー症状が悪化する原因には食事の問題もある。日本人の食生活のあり方についても考える必要があるのではないか」との見方を示した。

森林環境税に関しては、来年度(2024年度)から年額1,000円の課税が始まる一方、年末には森林環境譲与税の配分基準見直し問題に決着をつける必要がある。世論の動向を見極めながら議論を進める難しい時期を迎える中、青山長官が口にしたキーワードは「バランス」。「この税を広く集めて、きちんと使っていくことに山側と都市側が協力して取り組めるように話を進めていきたい。バランスのとれたコミュニケーションが重要になる」と語った。

立木や丸太の価格引き上げ不可欠、森林への“追い風”を”お金”に

約7年ぶりに林野庁に戻ってきた青山長官は、「立木や丸太の価格が上がらないことにすべての問題がある」と言う。「ウッドショックで川下の価格が上がっても、川上の価格は上がらず、今は川下の価格も元に戻ったとの報告を受けている」と述べ、その原因として、「農業に比べて流通が分断されており価格を上げるのが難しくなっているのではないか」と指摘、「経営規模を拡大してコストを削減することは重要だが、立木や丸太の価格が上がらないと縮小均衡になってしまう。伸ばしていけるところを伸ばしていく必要がある」との方向性を示した。

では、「伸ばしていけるところ」とは何か。青山長官は、カーボンニュートラルやSDGsの達成が世界共通の目標となっていることをあげ、「やはり森林は一般の人達にとってすごくイメージがいい」と言及。J‐クレジット制度や森林投資などの注目度が高まっていることを“追い風”ととらえ、「そういう動きをお金に変えていく方向でやっていくことも必要だろう」と力点を置いた。

青山長官は、農林水産技術会議事務局長時代にスマート農業などを担当した。その経験も踏まえ、新たな価値を創出するには、デジタル技術の活用が不可欠と強調。「農林分野のJ‐クレジットはまだ信用度が低い。二酸化炭素(CO2)をこれだけ吸収していると主張しても、かなりの推測値が入っている。デジタル技術を使ってもっと厳格に計算できるようになれば、J‐クレジットの価値も上がっていくだろう」と課題をあげた。

(2023年7月27日取材)

(トップ画像=「森林のイメージはいい」と話す青山長官)

『林政ニュース』編集部

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