青山新長官は「医食同源」、同期の小坂次長と新体制を牽引
7月4日付けで林野庁幹部の人事異動が発令された。早速、主要人物の寸評に入ろう。
長官の織田央氏(昭和63年入省・東大林卒)が退職し、農村振興局長の青山豊久氏(昭和63年・東大法)が新長官に就いた。
織田氏が次長から長官に昇格したのは、昨年(2022年)の6月末だった。在任1年でのリタイアは早い気もするが、1963(昭和38)年生まれで還暦を迎えていることもあり、新たな体制への移行を優先したのであろう。
組織のトップの最大の仕事は、次のリーダーに道を譲ること。この任務に答えを出した織田氏は、実にサバサバとしている。35年3か月に及んだ役人生活で一番の思い出は?と問うと、「(森林整備部長のときに)森林環境税ができたことですかね」と口にした。
7・4人事では、№2ポストである次長も交代した。森重樹氏(平成2年・東大法)が東海農政局長に転じ、後任には森林整備部長の小坂善太郎氏(昭和63年・名古屋大林卒)が起用された。
小坂氏は、技官の筆頭として、青山長官とともに林政の推進にあたる。織田・青山・小坂の3氏は入省同期で、互いによく知る間柄。したがって、青山・小坂のニューコンビも、阿吽(あうん)の呼吸で物事を進められるだろう。
周知のように、林野庁の長官・次長は、技官と事務官が交互に“たすき掛け”でつとめるのが慣例。つまり、小坂次長は、次の異動で長官に昇格する指定席に就いたわけ。このことは本人も十分自覚しており、口癖である「きっちり」とした采配がみられそうだ。
本省外への転出発令目立つ、望月林政課長の趣味は「競馬」
次に、事務官幹部の動きをみよう。次長の森氏が東海農政局長に出たほか、林政部長の前田剛志氏(平成5年・東大法)は(株)日本政策金融公庫特別参与、林政課長の鳥海貴之氏(平成6年・東大法)は全国農業共済組合参事兼業務部長、企画課長の森下興(こう)氏(平成7年・東大法)は(独)日本貿易振興機構本部農林水産食品部長に発令され、木材利用課長の小島裕章氏(平成8年・東大経)が輸出・国際局の国際経済課長に異動した以外は、揃って本省から離れた。あまり例のないケースである。
今回の人事では、事務次官の横山紳(しん)氏(昭和61年・東大法)をはじめ省の中枢ラインに動きはなかった。農政の基本政策に関する検討作業が佳境を迎えていることもあって、全体的に小幅な人事にとどめたため、「省内には行くところがない」(関係者)という事情もあったようだ。
さて、新たに着任した事務官幹部の横顔をみておこう。
林政部長の谷村栄二氏(内閣官房TPP等政府対策本部審議官、平成3年・東大法)は、国際派として知られるが、2009年末には公共建築物木材利用促進法の制定に向けたタコ部屋(法案検討室)のトップをつとめた。話好きであり、ふくよかな体躯とも相まって、「愛嬌がある」、「癒し系のキャラクター」というのが周囲の評。宮崎県で生まれ育ち、県立宮崎西高校のOBだ。56歳。
林政課長に就いた望月健司氏(経営局農地政策課長、平成8年・東大経)は、初の林野庁勤務となる。だが、予算課に在籍していたこともあってか、当面の林政の課題を聞くと、花粉症対策をはじめとした要点を淀みなく語る。切れ味を感じさせる人物だ。趣味は、競馬。4度の骨折を乗り越えたトウカイテイオーの勇姿が「とくに印象に残っている」と話す。東京生まれで私立麻布高校の卒業生だが、ご両親の実家は長野県。
企画課長には、2020年8月から1年弱、経営課長を担った上杉和貴氏(内閣官房内閣参事官、平成10年・京大法)が戻ってきた。2度目の林野庁勤務であり、今度は腰を据えて上杉カラーを発揮してもらいたい。
木材利用課長に就任したのは、中華人民共和国日本国大使館参事官に出向していた三上善之氏(平成13年・東大行政)。三上氏は、2016年7月から2年間、林政課の総括課長補佐をつとめた。物腰の柔らかい好人物というのが定評だ。国際派であり、木材輸出などの担当課長として適任。神奈川県立湘南高校卒。44歳。
木下課長の一人息子は芸能人、安高課長は「頑張り屋さん」
早くも紙幅が尽きてきた。技官幹部の横顔は、独断的にピックアップしてお伝えする。
小坂氏からバトンを受けて、計画課長の長崎屋圭太氏(平成4年・京大林)が森林整備部長に昇格。その後任として、計画課長には木材産業課長の齋藤健一氏(平成5年・農工大林産)が起用された。この2人の異動は以前から庁内で予想されていたとおり。林政を中軸で支えるのが使命であり、大局的な新政策なども期待したい。
木材産業課長には整備課長の石田良行氏(平成5年・宇都宮大林)が回った。石田氏は、宮崎県に出向した後、木材産業課の総括課長補佐をつとめており、ホームグラウンドに復帰したようなもの。逆にやりづらいところもあるようだが、割り切っていくしかない。ざっくばらんな言動が持ち味の好漢だ。
整備課長に発令されたのは、研究指導課長の木下仁氏(平成4年・北大林)。林野公共事業を担当するのは初めてであり、幅を広げる好機となりそうだ。ところで、木下氏の一人息子・琉維君(9歳)は、坂上忍氏がプロデュースする芸能プロダクション・アヴァンセに所属しており、NHKの大河ドラマなどに出演している。子供の活躍は親の励みにもなるようで、この話になると木下氏の目は輝きを増す。
木下氏の後任として研究指導課長に就いたのは森林利用課山村振興・緑化推進室長の安高志穂氏(平成5年・農工大林産)。女性技官の登用であり7・4人事の目玉だ。振り返ると、女性技官の草分けである花岡千草氏(昭和55年・京大院林産)が2009年9月から環境省の環境影響評価課長をつとめたことがあった。だが、本庁の課長に抜擢されたのは、安高氏が初めてとなる。上司は、「対外的に言うことは言うし、スタッフの使い方もうまい」と評価する。女性技官OGの1人からも、次のような人物評が届いている。「へこたれかけても、まわりを気にかけて、かわいい笑顔を忘れない頑張りやさん」。
森林総合研修所長の佐伯知広氏(平成3年・三重大林)が森林整備部付となり、森林研究・整備機構森林整備センター審議役の宇野聡夫氏(平成3年・北大林)が新所長に就任。宇野氏のポストには森林利用課長の川村竜哉氏(平成5年・農工大林)が就き、後任課長には、森林集積推進室長の福田淳氏(平成6年・東大林)が起用された。
佐伯氏が次の発令まで待機するのに伴って、一連の異動があったものだ。その中で、福田氏は、平成6年組から初の課長進出。木場の角乗りをこなす傍ら、フェイスブックで精力的に書評を公開するなど多才な面を持つ。本庁上司は、「能力があることはわかっている。リーダーとして周囲を引っ張っていって欲しい」と期待をかけている。
(2024年7月4・5日取材)
詠み人知らず
どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体お主は何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。