(前編)“木づかい”の新拠点・清水建設東京木工場【遠藤日雄のルポ&対論】

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(前編)“木づかい”の新拠点・清水建設東京木工場【遠藤日雄のルポ&対論】

東京メトロ東西線の木場駅(東京都江東区)周辺は、交通至便で緑も多く、首都・東京の中でも「住みやすい街」として上位にランクされている。この地で今、新しい“木づかい”の拠点がつくられている。それは、大手ゼネコン・清水建設(株)(東京都文京区、井上和幸・代表取締役社長)の東京木工場だ。東京木工場は、1884(明治17)年に清水組(当時)の木材加工場として開設され、以降、精巧な木工技術を連綿と現代まで引き継ぎながら、時代のニーズに応えた技術革新に挑む場としても存在感を放ってきた。ただ、工場内の施設群は築50年以上が経過し、老朽化が進んできたため、同社は一昨年(2021年)4月に全面的に建て替えることを決定。既存の施設群を順番に解体しながら、新たに来客棟と工場棟を建設するとともに、敷地内に森のギャラリーと体験の森を整備する大がかりな事業に着手した。約140年の歴史を持つ東京木工場のリニューアルは、林業・木材産業関係者にとっても注目のプロジェクトといえる。そこで、遠藤日雄・NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長は、建て替え事業を担っているキーパーソンに、最新の進捗状況と目指すゴールについて聞くことにした。

震災や戦後の復興を支えてきた工場などを全面リニューアル

木場駅から徒歩5分ほどの東京木工場では、昨年(2022年)の3月から本格的な解体工事、9月から本格的な新築工事が同時並行で進められており、慌ただしくも活気に満ちた空気が流れている。遠藤理事長は、まず工場長の和田昌樹氏に問いかけた。

遠藤理事長

約140年前の明治時代に創業した工場が現在も“現役”で稼働していることに驚かされるが、それを全面的にリニューアルするとは大きな決断だったのではないか。

和田工場長

東京木工場は、関東大震災や第2次世界大戦後の復旧・復興事業などで重要な役割を果たしてきた。1945(昭和20)年に戦火で焼失したが、直ちに復旧し、戦後復興とともに工場設備を順次拡充し、現在は4つの工場棟をはじめ倉庫、事務所棟など計11の...

遠藤日雄(えんどう・くさお)

NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。

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