第4期「森林生態系多様性基礎調査」の結果を公表【データ・ファイル】

全国 生物多様性保全 統計・調査

第4期「森林生態系多様性基礎調査」の結果を公表【データ・ファイル】

林野庁が全国レベルで実施している「森林生態系多様性基礎調査」の最新の結果が1月31日に公表された。同調査は、国内森林の状態や変化の動向などを把握するために1999年度から続けられており、施策立案や研究開発を支える基礎資料として行政・研究機関などで活用されている。

5年間で約1万5,000点のプロットを“人海戦術”で調べる

「森林生態系多様性基礎調査」は、1999年度に「森林資源モニタリング調査」としてスタートし、2010年度から現在の名称に変更して、今も行われている。

調査方法は、トップ画像のように全国を4kmメッシュで区切り、その交点に位置する森林を「調査プロット」(0.1ha)に設定して現地を調査している(標本調査)。

調査内容は、地況、林分概況、森林被害の状況をはじめ、施業履歴や立木・伐根・倒木の賦存状況、下層植生の生育状況、土壌侵食の状況など多岐にわたる。

調査は、5年間を1期として全国を一巡するサイクルで行われており、各期の「調査プロット」は約1万5,000点に及び、1年当たりでは約3,000点になる。これだけ多数の「調査プロット」に、事業を受託した調査チーム(基本的に3名で1チームを構成)が足を運んで、森林の状態などを調べている。リモートセンシング等では把握が難しい“現場の実情”を知るために、“人海戦術”による調査が行われている。

調査は、2019年度から第5期に入っており、このほど第4期(2014~2018年度)の結果がまとまり、公表された。

針葉樹と広葉樹の優先割合はほぼ半々、シカの分布域が拡大

第4期調査の結果から主な点をピックアップすると、まず日本の森林は、「針葉樹が優先する森林」が50.7%、「広葉樹が優先する森林」が45.7%と、ほぼ半々の割合になっている。

日本を代表する樹種であるスギについては、第1期から第4期にかけて分布域に大きな変化はなかったが、成熟した地点の割合が第3期の68%から第4期には76%に増えていることがわかった。

シカの確認状況(第3期と第4期)

森林被害に関しては、シカによる樹木の剝皮や食痕などが確認された地点が第3期から第4期にかけて増加しており(参照)、シカの分布域の拡大が森林生態系に影響を及ぼしていることが窺えた。

マツ枯れ(マツ枯損)については、第1期から第3期まで西日本を中心に被害確認地点が増加していたが、第3期から第4期にかけて新たな被害確認地点は減少した。ナラ枯れ(ナラ枯損)の被害確認地点は、第3期の465点から第4期の452点と大きな変化はなく、第4期で新たに確認された地点のほとんどが西日本だった。

また、立木調査等の結果から、国内の森林の総蓄積は約86億m3と推計された。

林野庁は、第4期調査結果の公表に合わせ、利用者が必要とするデータを簡単に抽出できるプログラムに加え、研究者などがより詳細なデータセットを使えるようにして、ウェブサイトで公開した。

調査結果を踏まえて、森林簿における森林蓄積推計の精度向上を図る取り組みなども行われており、貴重な“足で稼いだ”データをさらに有効活用していくことが期待されている。

(2023年1月31日取材)

(トップ画像=調査プロット(現地調査対象地)のイメージ)

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしていきます。

この記事は有料記事(1331文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。