カラマツを徹底活用して付加価値を高める齋藤木材工業【突撃レポート】

カラマツを徹底活用して付加価値を高める齋藤木材工業【突撃レポート】

カラマツ集成材のトップメーカーとして知られる齋藤木材工業(株)(長野県長和町、齋藤健社長)が持ち前の技術力や製品開発力に磨きをかけながら、事業領域を広げようとしている。創業161年目を迎えている老舗企業の視界には、どのような将来ビジョンが映っているのか。

大断面集成材からプレカット加工まで、3つの工場が役割果たす

齋藤木材工業は、カラマツ集成材の開発・生産・販売を事業の柱に据え、プレカット加工や木造建築物の設計施工なども手がけている。主力製品は、非住宅向けの構造用大断面集成材、住宅向けの規格構造用集成材、耐火集成材などで、とくに湾曲構造用集成材を得意としている。

社員数は73名、年間売上高は18億円前後で推移しており、加工拠点として、①ナガト、②林材、③古町の3工場を持っている。①ナガト工場は、非住宅向けの構造用集成材(大断面~小断面)や耐火集成材などを生産、②林材工場は、ラミナ(挽き板)の製材・乾燥や住宅向けの規格構造用集成材の生産などを担い、③古町工場は、プレカット加工のほか配送センターの役割も果たしている。各工場の月間生産量は、①ナガト工場が約250m3、②林材工場が約300m3、③古町工場が約800坪(プレカット加工)。3工場を合わせた年間の原木(丸太)使用量は約1万5,000m3になっている。

全国で初めてJAS認証取得、非住宅市場を率先して切り拓く

齋藤木材工業は、1983年にカラマツの構造用集成材の生産を開始し、1987年に全国で初めてカラマツでJAS認証を取得した。以降、非住宅市場の開拓に焦点を定め、大断面集成材や耐火集成材の開発・生産や、ゼネコンをターゲットにした営業活動などに注力してきた。齋藤健社長は、「当初は見向きもされなかったが、設計施工まで含めてトータルで注文を受けることで徐々に認知されてきた」と振り返る。

大手ゼネコンの(株)竹中工務店(大阪府大阪市)とは、約15年前から耐火集成材「燃エンウッド」の開発に取り組み、「有明西学園」(東京都江東区)や「フラッツウッズ木場」(同)など、約1,200件に及ぶ非住宅物件の建設に携わってきた。様々なオーダーにフレキシブルに応えるため、ナガト工場には、通直集成材や湾曲集成材のプレス装置、モルダー、長さ18mのCNCルーターなどの加工機が複数台設置されている。

4年前から住宅向けにも注力、「信州唐松丸」のブランド化へ

非住宅分野の需要獲得で実績を重ねてきた齋藤木材工業は、4年前から一般住宅向けとなる規格構造用集成材の供給にも力を入れており、最高ランクの強度(E-105)を持つ集成材を「信州唐松丸」と名付けてブランド化を進めている。

住宅の梁や柱等に使用される「信州唐松丸」は、国産材利用に積極的な工務店などが主たる販売先になっている。

林材工場に設置されているワンマン製材機

「信州唐松丸」を生産している林材工場では、末口径18〜34cmのカラマツ原木を仕入れ、厚さ20〜40mmのラミナに加工して、3台ある中温蒸気式乾燥機で脱脂乾燥を施している。

このサイズのカラマツ原木は、ウッドショックやロシアのウクライナ侵攻などの影響で引き合いが強まり価格が高騰、ピーク時の昨年(2022年)6月にはm3当たり2万8,000円まで価格が上昇し、同社の利益を圧迫した。それでも齋藤社長は、「カラマツの価値が高まることは悪いことではない。これからも使い続けていく」と言い切る。

薪の生産に加えテーブル・ベンチも、“小さな大企業”目指す

齋藤木材工業は、文久2年(1862年)に酒樽の製造業者として創業した。1957年に法人化し、昭和40年代に集成材の製造を始め、地場産のカラマツにこだわり続けて現在に至っている。

8代目社長である齋藤健氏は、大学卒業後、民間企業に入り、家業である同社で働くつもりはなかったという。しかし、実父で第5代社長の齋藤廣氏から、「大断面集成材の工場を立ち上げるから戻ってきて欲しい」と言われ、1984年に同社に入社。その後3年間は工場の立ち上げ業務などに追われ、ほぼ家には帰らなかったという。一貫して技術畑を歩き、2018年に社長に就任した。

齋藤健・齋藤木材工業社長

「モノづくりが好き」と柔和に話す齋藤社長は、「依頼があったときに『できない』とは決して言わない」と口にし、「無理難題にみえても解決策を考えて提案する。それを積み重ねられる人材とノウハウが弊社の力だ」と話す。

すでに“100年企業”となっている同社は、カラマツの活用をさらに進める新規事業に着手している。第1弾は昨年10月から始めた薪の生産。新設した薪専用工場で、含水率を12%前後まで落とした「信州産カラマツ薪」をつくり、ECサイトなどで販売している。

信州産カラマツ薪(サイズは25cmと35cm、価格は1箱1,360円(税込み)~)

第2弾として、テーブルやベンチなどの生産・販売を計画しており、来年度(2023年度)には新たに5軸の大型CNCルーターを導入して、加工能力をアップする方針。齋藤社長は、「歩留まりを向上させてカラマツの価値を高めながら事業を多角化する。“小さな大企業”として森林サイクルを実現したい」と意気込んでいる。

(2023年1月19日取材)

(トップ画像=ナガト工場の集成材プレス機)

『林政ニュース』編集部

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