スギ集成管柱をホワイトウッド(WW)より200円安く生産する協和木材新庄工場【突撃レポート】 

スギ集成管柱をホワイトウッド(WW)より200円安く生産する協和木材新庄工場【突撃レポート】 

国産材製材工場では国内最大規模となる協和木材(株)(東京都江東区、佐川広興社長)の新庄工場(新庄市)が本格操業に入っている。年間12万m3の原木を消費し、スギ集成材を3万6,000m3生産する山形県最大の木材加工拠点だ。佐川社長は、「国内最高水準の品質と歩留まりを達成できた」と話しており、輸入集成材に“勝てる価格”を実現している。

年間12万m3の原木を消費、WWと同じ品質で200円安い!

新庄工場は、昨年(平成28年)9月に完成し、今年(平成29年)4月末時点で稼働率80%に達している。6月にはフル稼働になる見込みだ。佐川社長は、「ここで生産するスギ集成管柱は品質的にはホワイトウッド(WW)集成管柱と同レベルであり、1本単価は200円安く販売できる」と明確に言う。目指すのは、「住宅の柱分野における国産材シェアを取り戻すこと」だ。

佐川広興・協和木材社長

国産材製材協会の会長でもある佐川社長は、「柱材にスギを使ってもらおうと、長年ムク(無垢)材で頑張ってきた」。だが、「プレカット工場が一度集成材を使ってしまうとムク材には戻ってこない。そこで集成材で対応することにした」と言い、「品質的には福島工場でWWと同等レベルになっていたので、コストでも対抗すべく新庄工場を建設した」と狙いを語る。

新庄工場全体の敷地面積は11万6,600m2、このうち集成材工場が4万5,500m2、貯木場が6万3,800m2となっている

当初取得した民有地が軟弱地盤と判明し、現在の新庄中核工業団地2区画分を取得し直すなどの曲折はあったが、昨年4月に工場建設に着手して9月に完成、10月から試験操業を重ね稼働レベルを上げてきた。

シンプルな加工工程を自動化、原木は長さ2mスギB材のみ

佐川社長が製材工場を設計・建設したのは新庄工場で4か所目であり、培ってきたノウハウを注ぎ込んだ「会心の作」と自信をみせる。加工工程はシンプルで、製材→乾燥→集成化の3段階からなる。

製材施設にあるのは、最大直径450㎜の原木が投入可能なキャンター1基。ギャングソーも設置されているが、これで月間1万m3も挽きこなせるのかと思うほどコンパクトだ。挽く原木は、長さ2mのスギB材のみ。キャンターの処理能力は毎分7.5本。つまり、15m/分のスピードで次々に製材でき、径級が大きくなるほど生産量が増えることになる。操業体制は、2シフトで16時間としている。

製材後のラミナを投入する乾燥機は、容量120m3のものが10基ある。製材歩留まり50%と仮定すると月間のラミナ生産量は5,000m3。10基の乾燥機が月に5回転すれば処理能力は6,000m3となり余裕がある。乾燥機に蒸気・熱を供給する木屑焚きボイラーは12tと大きく、ずぶ生の樹皮でも燃やせる。現在は、原木から剥いだ樹皮とプレーナー屑を合わせて燃焼させるだけで間に合っている。

ラックにストックされた大量のラミナ

集成材加工施設で目を引くのは、(株)太平製作所製の欠点除去装置で、染み、腐れ、死節などを自動チェックできる。除去レベルを上げると品質は向上するが、歩留まり(採算)は低下するので微妙な“さじ加減”が必要であり、協和木材と太平製作所が協議しながら設定している。山形県産材は根曲がり材が多いので、ラミナの反り情報もこの装置で取得し、接着段階で処理している。

欠点が除去されたラミナは、オート挿入で品目ごとに巨大なラックに保存し、長短のラミナを組み合わせてフィンガージョイント(FJ)した後、長さ9mのラミナに成型。これを3分割して3mラミナができあがる。集成材管柱は4プライ構成であり、この時点でフェイス・バック用と中芯用、さらに反り方向などをコンピューターが選別・組み合わせて3台の回転プレスに投入し集成化する。基本的に全工程が自動化されているが、ラックにオート挿入されない長さ60㎝以下のラミナについては、人力でFJ装置に投入している。これも、歩留まりアップの秘訣だ。

3m×10.5㎝角管柱が1,600円、全社で42万m3体制に

新庄工場が生産している集成材は、3m×10.5㎝角の管柱のみ。12㎝角や積層間柱なども生産可能だが、当面は品目を絞って生産コストを徹底的に下げる方針だ。製材段階でラミナにならないものは梱包材に加工することで、全体の歩留まりは40%程度になっている。

スギ集成材の販売先は、東北・北陸地域のプレカット工場。同社は福島工場でもスギ集成材を生産しており、関東方面に出荷しているので、エリアの重複を避けるようにしている。JAS認定は3月29日にE65で取得済み。大手プレカット工場からは、「WWと同等の品質」と、現場目線からのお墨付きももらっているという。

集成管柱の相場(1本単価)は、WWが1,800円前後、m3換算すると5万5,000円。これに対し、新庄工場の製品出荷価格は200円安の1,600円、m3換算で4万8,000円を標準にしている。

平成16年に中国木材(株)が九州の伊万里工場でスギ集成管柱の生産を始めた時、当時の堀川保幸社長(現会長)が描いたm3当たりのコスト設定は、スギ原木が1万円、グリーン(未乾燥)ラミナが2万3,000円、乾燥ラミナが2万8,0000円、集成加工後で5万5,000円。これならWW集成材と同価格で販売可能というものだった。

新庄工場は、このコスト設定をも下回る4万8,000円というレベルに達している。しかも品質は落としていない。スギ集成材の新時代到来を感じさせる工場がついに出現したといえる。同社の国産材使用量も福島工場の年間30万m3に新庄工場の12万m3を加えて42万m3に拡大している。

(2017年4月20日取材)

(トップ画像=ラミナを効率的に接着・成型する回転プレス)

『林政ニュース』編集部

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