スギ花粉削減へ「初期集中対応パッケージ」策定 伐採重点区域や国産材住宅表示制度など盛り込む

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スギ花粉削減へ「初期集中対応パッケージ」策定 伐採重点区域や国産材住宅表示制度など盛り込む

政府は、10月11日に首相官邸で3回目の「花粉症に関する関係閣僚会議」*1を開き、5月30日に策定した「花粉症対策の全体像」*2の内容を前倒しして実行する「初期集中対応パッケージ」をまとめた。10月中に決定する総合経済対策に盛り込み、今年度(2023年度)補正予算で必要な財源を確保する方針だ。

「初期集中対応パッケージ」は、年内に策定する予定だった「林業活性化・木材利用推進パッケージ」を先取りするかたちでまとめたもので、来年(2024年)の花粉飛散時期を見据えた対策に早めに着手する狙いがある。関係省庁が連携して、①発生源対策、②飛散対策、③発症・暴露対策に取り組み、とくに最優先課題である①発生源対策については、スギ人工林の面積を10年後の2033(令和15)年度までに約2割減少させる目標を達成するため、今年度中に「スギ人工林伐採重点区域」を設定して伐採・植え替えを加速化する。同区域を中心に、路網の整備や高性能林業機械等の導入、森林の集約化などを進めるとともに、花粉の少ない苗木の増産や担い手の育成・確保などに関する施策も拡充する。また、“出口”対策としてスギ材の需要を拡大するため、木材加工工場や保管施設の整備を支援するほか、国産材を活用した住宅に関する表示制度や住宅生産者の国産材使用状況等を公表する仕組みを今年度内に創設し、改正建築基準法の施行(来年4月1日)と合わせて木材利用の促進を図る。

岸田文雄首相は、第3回関係閣僚会議に先立ち、10月7日に茨城県常陸大宮市内のスギ林を訪れて伐採作業などを視察した後、「総合経済対策に花粉症対策の初期集中対応パッケージを盛り込み早急に実施に移していく」と語り、11日の会議でも「(パッケージに)必要な予算を確保して着実に実行していく」と意欲をみせた。

【解説】“本気度”を示すが補正の規模は見えず、“先食い”の反動も

岸田首相自ら現場に足を運んだ上で、「初期集中対応パッケージ」が発表された。花粉削減に取り組む政府の“本気度”が窺えるが、パッケージの裏づけとなる肝心の今年度補正予算については、まだ規模や時期などが見えてこない。補正予算では、国土強靱化対策やTPP対策などの経費も確保する必要があり、林野庁内からは、「花粉症対策の予算をそのまま上乗せするのは簡単ではない」との声も聞かれる。

パッケージに盛り込んだ内容は、林野庁が来年度(2024年度)予算要求で打ち出した重点事項を“先食い”したものであり、補正で所要額が確保されれば、それだけ来年度予算が削られる可能性もある。パッケージの目玉である「伐採重点区域」は、都道府県が人口の多い都市部周辺に設定することにしているが、範囲の目安などが固まるのはこれからであり、年末に向けて慌ただしい作業を強いられることになりそうだ。

(2023年10月11日取材)

(トップ画像=高性能林業機械に試乗する岸田首相、首相官邸ウェブサイト)

『林政ニュース』編集部

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