花粉減へスギ人工林を10年後に約2割削減閣僚会議が「全体像」決定、伐採・植え替え加速化

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花粉減へスギ人工林を10年後に約2割削減閣僚会議が「全体像」決定、伐採・植え替え加速化

政府が新設した「花粉症に関する関係閣僚会議」は、5月30日に2回目の会合を開き、10年後に向けた「花粉症対策の全体像」を決定した。最優先課題に「発生源対策」をあげ、10年後の2033(令和15)年度までにスギ人工林を約2割減少させる目標を掲げ、伐採・植え替えを促進する方針を打ち出した。これによって、花粉発生量は10年後に約2割減少し、30年後には半減させることを目指す。目標達成に向けた工程表も示し、①スギ材需要の拡大、②花粉の少ない苗木の生産拡大、③林業の生産性向上と労働力の確保などに総合的に取り組んでいくため、年内に「林業活性化・木材利用推進パッケージ」を策定して、各種事業の促進を図ることにした。

関係閣僚会議の決定を受けて、農林水産省と林野庁は、同日付けで「花粉発生源スギ人工林減少推進計画(略称:スギ伐採加速化計画)」を公表し、スギ人工林の年間伐採面積を現状(2020年度)の約5.1haから2033年度には約7.1万haに拡大する目標を設定。花粉の発生源となるスギ人工林の年間減少ペースも約3.2万haから約6.2万haに引き上げるとし、進捗状況などをチェックしていくことにした。

大きな目標」をどう達成するか、予算と国民の理解がカギ

岸田総理の“鶴の一声”で、スギ花粉症対策が林政の最重要課題に浮上してきた。林野庁はこれまでも発生源対策に取り組んできたが、「大きな目標を掲げたところが従来とは違う」(森林利用課)という。

関係閣僚会議が決定した「花粉症対策の全体像」には、スギ人工林を約2割減少させるだけでなく、花粉の少ないスギ苗木の生産割合を5割から9割以上にアップさせ、スギ材製品の需要を1,240万m3から1,710万m3に増やすなどの目標値も盛り込まれた。「正直に言って非常に厳しく高い目標」(同)となっており、来年度(2024年度)予算などで必要な財源をいかに確保するかが課題になる。目標達成に向けて、国産材住宅に「花粉症対策への貢献度を明示」することなども検討課題にあがっており、広く国民の理解を得ることも対策加速化のカギになりそうだ。

(2023年5月30日取材)

『林政ニュース』編集部

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