白鷹町の地縁団体が約1,700haを経営委託 鮎貝自彊会(あゆかいじきょうかい)とおきたま林業が契約を結ぶ

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白鷹町の地縁団体が約1,700haを経営委託 鮎貝自彊会(あゆかいじきょうかい)とおきたま林業が契約を結ぶ

山形県白鷹町の認可地縁団体・鮎貝自彊会(須田信一理事長)が約1,700haに及ぶ直営林の経営を同町のおきたま林業(株)(那須正社長)に委託し、主伐・再造林の推進などを進めることにした。広大な共有林を活用して持続的林業経営に挑む全国的にも先駆的な事例になる。

鮎貝自彊会は、1954(昭和29)年に1町5か村が合併して白鷹町が誕生した際に旧鮎貝村の財産を引き継ぎ、町面積の5分の1にあたる約2,700haの森林を所有している。これまで分収林制度などを利用して森林の活用に取り組んできたが、材価の低迷もあって厳しい経営状況が続いている。そこで、人工林と天然林からなる約1,700haの直営林部分について新たな活用策を検討した結果、おきたま林業からの提案を採用し、10月4日に経営を委託する契約を結んだ。

那須建設・丸ト建設・物林が新会社で結束、低コスト林業実践

おきたま林業は、長井市に本社を置く那須建設(株)(那須正社長)と地元・白鷹町の丸ト建設(株)(村上栄一社長)、木材総合商社の物林(株)(東京都江東区、淡中克己社長)が出資して4月に発足した。財産区など一定のまとまりのある森林の経営を受託し、コンテナ苗やエリートツリー、早生樹などを活用した低コスト林業を行って収益性の確保と主伐・再造林の促進を図ることにしている。実際の現場作業は、地元の事業体などと連携して進める体制をとっている。

那須建設は、置賜(おきたま)地方一円の治山・林道・建設工事を手がけておりコンテナ苗の生産も行っている。丸ト建設は、製材工場を持って建設工事を受注しているほか、那須建設などと共同出資して設立したおきたま木材乾燥センター(株)の運営も担っている。物林は、白鷹町が木造の新庁舎(まちづくり複合施設、第610・640号参照)を建設した際に木材の調達などを担当し、以降も人工林経営に関する意見交換を行うなど関わりを深めてきた。

鮎貝自彊会から約1,700haの直営林の経営を任されたおきたま林業は、森林経営計画を樹立して、主伐・再造林の一貫作業などを行っていく方針。収益性を高めるため、カーボンクレジット(J-クレジット制度)を利用することも検討している。 なお、白鷹町は、3月に「白鷹町森林(もり)とつながる暮らしビジョン」を策定し、林業・木材産業の振興策を強化している。鮎貝自彊会とおきたま林業の取り組みは、その成果の1つに位置づけられており、今後のモデルになるともみられている。

(2022年10月4日取材)

(トップ画像=経営委託契約を取り交わした(右から)佐藤誠七・白鷹町長、須田信一・認可地縁団体鮎貝自彊会理事長、那須正・おきたま林業社長、大貫肇・おきたま林業取締役)

『林政ニュース』編集部

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