6人のトップリーダーが語る 再造林放棄地ゼロへ、それぞれの対策

6人のトップリーダーが語る 再造林放棄地ゼロへ、それぞれの対策
2月6日に開催された「伐採・搬出・再造林ガイドライン・サミットin鹿児島」*1におけるパネルディスカッションで、東北と九州の森林づくりを担う6人のリーダーが「再造林放棄地ゼロ」に向けた対策を語り合った。その要点をお伝えする。

再造林率倍増へ、ガイドラインに即し「胸を張れる事業体」に

パネルディスカッションは、鹿児島大学の枚田邦宏教授が進行役をつとめ、約1時間半にわたって行われた。

村山浩美氏

地元・鹿児島からは3名が登壇。県森林経営課の村山浩美課長は、宮崎県に続いてガイドラインを策定したことを契機として、45%にとどまっている同県の再造林率を「倍増させたい」と当面の目標を示した。

堂園司氏

曽於地区森林組合の堂園司組合長は、「木材価格の低迷で森林への関心が薄れ、所有者の世代交代や不在村化が進み、伐採後に植林をしない放棄地も出ている」と指摘、現状を打開するためにはガイドラインの活用が欠かせないとし、「当組合は(第1段階の)☆(1つ星)を取得した。さらに、☆☆(2つ星)へ上がっていきたい」と意欲をみせた。

寺床隆志氏

大口地区素材生産造林事業協同組合の寺床隆志理事長も、「☆はスタートラインであり、☆☆、☆☆☆と進んでいき対外的に胸を張れる事業体になりたい」と呼応し、「従来は素材生産業者が伐って、植え付けは森林組合となっていたが、ガイドラインには伐出と再造林を一体的に行おうという考え方が込められている」との認識を示した。

岩手県機構は再造林にha10万円、先行事例を参考に普及を

東北の岩手県から参加したノースジャパン素材流通協同組合の鈴木信哉理事長は、すでに独自のガイドラインを策定・運用しており、同組合に加入する際には合法木材に関する研修を義務づけていることなどを説明した上で、関係8団体で「森林再生機構」を設立して基金を造成し、再造林を支援するためha当たり10万円を上限に助成している取り組みを紹介。基金への拠出額は、原木出荷者(素材生産業者)がm3当たり20円、原木市場・原木流通業者も同20円、原木購入業者(製材・合板工場等)は同10円としており、同協同組合からは、「年間1,200万円程度を拠出している」と現状を伝えた。

鈴木信哉氏

同じく“東北組”である(有)秋田グリーンサービスの佐藤総栄社長は、「(秋田県内の)民有林の再造林率は20%程度でしかなく、50%まで高めないと将来的に資源維持は難しくなる。ガイドラインもまだ策定されていない」と報告し、「岩手県のように業界全体で資金拠出をして再造林を支援する仕組みが必要になってくるだろう」と述べた。

佐藤総栄氏

ガイドラインを全国で初めて定めたひむか維森の会*2*3の松岡明彦代表は、「宮崎県は、県北~県央は架線集材、県央~県南は車両集材と、地域によって素材生産の方法が異なり、とりまとめにはいろいろな議論があった」と策定までの経緯を述べ、「これから皆伐が始まる地域の方々も当方のガイドラインを参考にしてつくっていって欲しい」と呼びかけた。

松岡明彦氏

伐出と造林の“接点”である地拵えは誰が? つながりが重要

各地の取り組みを踏まえた意見交換では、「苗木と労力が足りない」(堂園氏)など、現場が直面している課題が議論された。とくに論点となったのは、伐出と造林の“接点”である地拵えを誰が担うかという問題だった。

鈴木氏は、「東北は雪が降る。だから伐採した後に再造林となると年度が変わってしまう」と述べた上で、「最近は若い就業者が増え、機械化が進んできたことで、地拵えや植え付けまでを一貫してできるようになってきた。バイオマス発電所の増加で短コロ(根株等)まで売れるようなっているので、(山から)全部出せれば地拵えはいらなくなる」との対応策を示した。

これに関連して佐藤氏は、「秋田県は高齢化率と人口減少率が高く、造林事業を担ってきた人達がやめてしまう事例がかなり出ている。自分達も違う地域まで出て行って造林を手伝うような状況だ」とし、「地拵えまで機械化する必要性がある。できるだけ林地残材を出さないようにしていきたい」と述べた。

寺床氏は、素材生産業者と森林組合の“住み分け”に触れて、「地拵えをどこまで素材生産業者がやればいいのか。やった場合の経費はどのくらいいただけるかという話がよく出る」と発言し、「しょっちゅう顔を合わせている関係だったら、明日は忙しいので手伝ってもらえないかと言えるようになる。同じ山の仕事をするメンバーというつながりをつくっていけたらいい」と提案した。

全体の議論をコーディネートした枚田氏は、地域事情を踏まえたガイドラインづくりの重要性を強調した。ひむか維森の会が先鞭をつけた自主ルール作成の取り組みが全国の林業地にも広がっていくのか──鹿児島からの“発信の行方”が注目される。

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしていきます。

この記事は有料記事(2025文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。