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小坂次長に定年延長の発令、北海道局長に北大出身の関口氏
春の到来とともに、4月1日付けで林野庁の人事異動が発令された*1。早速、小覧恒例の人物月旦を始めよう。
国会開会中のこの時期は、定年退職や独立行政法人等への出向に伴う異動が行われるだけで、長官など首脳級が動くことはない。ただその中で、密やかではあるが見逃せない発令があった。それは、次長の小坂善太郎氏(昭和63年入庁・名古屋大卒)に、「異動期間の延長(特例任用)(令和7年9月30日まで)」という辞令が出たこと。わかりづらい表現だが、要は定年を延長するという意味だ。
昭和39年7月生まれの小坂氏は、すでに定年年齢に達している。だが、技官トップとして、事務官長官である青山豊久氏(昭和63年・東大)の次の長官を担うべきポジションにいる。ゆえに、ここで動くことはなく、現役続行の発令が出たのだ。
この“動かない人事”には、前例がある。小坂氏の先輩技官である沖修司氏(昭和54年・名古屋大)も次長時代の平成28年に定年延長の手続きをし、翌29年7月に長官に昇格した(第535・728号参照)。小坂氏も同様のレールに乗っているとみるのが妥当だろう。
それでは、4月1日付けで動いた人物にスポットをあてる。
北海道森林管理局長の吉村洋氏(昭和63年・京都府大)が退職し、代わって森林研究・整備機構理事の関口高士氏(平成2年・北大)が道局長に就いた。小坂次長と同期の吉村氏は、リタイア後も林業界に欠かせない男気のある人物。後任の関口氏は、業務課長→経営企画課長→計画課長→中部森林管理局長→森林研究・整備機構理事と少々慌ただしく歩んできたが、北大出身であり、ようやくホームグラウンドで腰を据えて仕事ができそうだ。
村上氏が治山課長で本庁復帰、研究指導課長に松本氏を起用
4・1人事では、本庁の4課長が交代した。
治山課長の河合正宏氏(平成3年・京都府大)が森林研究・整備機構森林整備センター総括審議役に転じ、秋田県に出向していた村上幸一郎氏(平成5年・山形大)が本庁に復帰して河合氏からバトンを受けた。この人事は順当の一語といえよう。3年前の4月に秋田県に出た村上氏は、農林水産部森林技監として再造林率の引き上げなどに奮闘、「あきた森林づくりカレーうどん」の完売にも一役買った。

研究指導課長の安高志穂氏(平成5年・農工大)も森林研究・整備機構に出て、森林保険センター総括審議役に着任した。林野庁初の女性課長として新風をもたらした安高氏は、課員への目配り・気配りもよく、管理職としての役割を十分に果たした。異動直前には、相次ぐ林野火災への対応に追われたが、同課の門脇裕樹・森林保護対策室長(平成5年・農工大院)や河内(こうち)清高・総括課長補佐(平成14年・名古屋大院)らとともに眦(まなじり)を決して業務にあたっていた。なお、4・1人事で門脇氏は東北森林管理局計画保全部長に、河内氏は計画課海外林業協力室長にそれぞれ異動した。
安高氏に代わって研究指導課長に就任したのは、計画課に席を構える大臣官房政策課調査官の松本純治氏(平成7年・京大)。同課の前身・研究普及課時代に調整班の係長として温暖化問題などに取り組んだ職場を、今度はトップとして率いる。といっても、松本氏から特段の気負いは感じられない。ほのぼのとした人柄とふくよかな体躯が松本氏の持ち味。京都の名門私学・洛南高校では吹奏楽部に所属しクラリネットを吹いた。その影響かご子息も吹奏楽部で活躍しており、「付き添いや応援で結構忙しいです」と相好を崩す。

業務課長に平成8年組の岡村篤憲氏、管理課長に三上善之氏
業務課長も交代した。きっかけは、森林研究・整備機構理事の箕輪富男氏(平成3年・岩手大)が国有林野部付に異動したこと。箕輪氏の後任には森林技術総合研修所長の嶋田理(おさむ)氏(平成7年・北大)、その後任には業務課長の宇山雄一氏(平成6年・北大院)が続き、新しい業務課長には経営課林業労働・経営対策室長の岡村篤憲(あつのり)氏(平成8年・九大)が起用された。
嶋田・宇山の北大コンビは、昨年4月に揃って動いたばかり*2。在任1年での異動は少々早い気がするが、人事の巡り合わせなのだろう。
平成8年入庁組から3人目の本庁課長進出となった岡村氏は、広島県に出向した後、1年9か月にわたって業務課の総括課長をつとめ、橘政行氏(現・九州森林管理局長)、前出の関口氏、宇野聡夫氏(現・森林研究・整備機構理事)と3人の課長に仕えた。かつて知ったる職場に課長として復帰し、本領発揮の場となりそうだ。外交的な人物で、こちらの問いかけに当意即妙で答えるセンスのよさがある。息抜きの趣味は、海釣り。銚子沖などに船を出している。釣果は?と聞くと、「それはまあ」とはぐらかされた。

事務官ポストである管理課長も交代した。山田裕典氏(平成8年・一橋大)が在任1年で農林漁業信用基金の総括調整役に転じ、大臣官房付で待機していた三上善之氏(平成13年・東大)が管理課長に着任した。
三上氏は、林政部の木材利用課長をつとめた後、坂本哲志農相(当時)を秘書官として補佐した。管理課長は、「独特の国有林ワールド」(山田氏の弁)で人事・総務部門を統括する。重責といえるポジションだが、三上氏ならば如才なくこなせるであろうし、次の飛躍につなげてもらいたい。

秋田県に永井氏、山梨県に英賀氏、宮崎県に川本氏が出向
さて、ここからは自治体との交流人事をみる。
前出の村上氏と入れ替わって秋田県の森林技監に着任したのは経営企画課総括課長補佐の永井壮茂(たけも)氏(平成12年・東大院)。素直で前向きなキャラクターは、人を呼びよせ明るくさせる。若手時代に神奈川県小田原市へ林野庁から初の出向者として飛び込み、今でも交流が続いているのは、「愛されキャラ」であることの証左。得意ジャンルは治山・防災であり、木材産業が盛んな秋田県では揉まれるだろうが、それも永井氏の“肥やし”になる。飛躍を期待したい。

山梨県技監の岸功規(よしのり)氏(平成11年・筑波大院)が森林利用課付として本庁に戻り、計画課課長補佐(森林計画指導班担当)の英賀慶彦氏(平成16年・東大)が山梨県に出た。英賀氏の苗字は「あが」と読む。兵庫県立姫路西高校から東大に進み、「第4回みどりの学術賞」を受賞した鈴木和夫氏(現・東大名誉教授)の教えを受けて林野庁に入った。米国への留学やFAO(国連食糧農業機関)での勤務歴があり、「語学は堪能」(上司)。ただ、エリート然としたところは全くなく、人づきあいもいい。スラリとした体躯で、高校・大学時代はワンゲル部で汗を流した。45歳。

宮崎県環境森林部次長の松井健太郎氏(平成15年・岩手大)が3年ぶりに本庁に戻り、森林利用課総括課長補佐に就いた。代わって、業務課課長補佐(供給企画班担当)の川本芳光氏(平成18年・東京農大)が山村・木材振興課みやざきスギ利用推進室長として宮崎入りした。木材商社の物林(株)に出向したこともある川本氏は、木材流通・販売の実情に詳しい。無類のカープファンであり、釣りやキャンプ、ゴルフも愛する趣味人でもある。単身赴任で向かった宮崎で、新たな花を咲かせそうだ。41歳。

(2025年3月30・31日取材)

詠み人知らず
どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。