人物月旦・林野庁4月異動の主な顔ぶれ 中部森林管理局長、本庁3課長が交代【緑風対談】

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人物月旦・林野庁4月異動の主な顔ぶれ 中部森林管理局長、本庁3課長が交代【緑風対談】

森谷氏が“古巣”に復帰、宇野・嶋田・宇山氏と北大勢が続く

4月1日付けで林野庁の人事異動が発令された*1。例年のごとく、国会開会中のこの時期に長官など首脳級が動くことはない。今回も定年退職などに伴う人材の再配置が粛々と行われた。ただ、その中にも目を引く発令があった。早速、小欄恒例の人物月旦に入ろう。

まず取り上げるのは、中部森林管理局長の交代。昨年(2023年)4月の着任時に59歳に達していた今泉裕治氏(昭和62年入庁・東大卒)が退職し、後任として森林研究・整備機構理事の森谷克彦氏(昭和63年・山形大)が中部局長に就任した。
 
前長官の織田央氏(昭和63年・東大)や現次長の小坂善太郎氏(昭和63年・名古屋大)らと同期の森谷氏は、山の現場が似合う技官。森林研究・整備機構ではコンプライアンスなど裏方的な業務に従事していたので、「やっと“古巣”に帰れる」と屈託なく話す。入庁直後に御嶽山を抱える小坂営林署(現・岐阜森林管理署)で担当区主任をした経験があり、中部局には馴染みがある。休日は仲間と自転車ツーリングに出かけるアクティブな58歳。もともと肌艶の良い人物だが、一段と輝きを増して長野入りした。

森谷克彦氏

森谷氏の後任として、森林研究・整備機構理事に発令されたのは森林技術総合研修所長の宇野聡夫(としお)氏(平成3年・北大)。その後任は、業務課長の嶋田(おさむ)氏(平成7年・北大)、そして業務課技術開発調査官の宇山雄一氏(平成6年・北大院)と続いた。各氏とも順当な前進なのだが、北大勢の玉突き人事となったのは偶然か。

この中で、業務課長に昇格した宇山氏は、前任の島田氏より入庁が1年早く、いわゆる逆転人事となった。この点を宇山氏に聞くと、「嶋田さんは先輩です」とあっさり。嶋田氏は平成3年に北大を卒業したが、青年海外協力隊などで武者修行したため、入庁が宇山氏より遅れたのだという*2。

元ボクサーの宇山氏*3は、打たれ強さを感じさせる好漢。健康法は? と問うと、「そろそろそういうことも考えなければいけませんね」と鷹揚に答えた。神奈川県出身。55歳。

宇山雄一氏

山田新管理課長の好きな作家は米澤穂信、整備課長に土居氏

事務官の指定席である管理課長が交代した。在任2年弱となっていた石黒裕規氏(平成6年・東大法)が農業・食品産業技術総合研究機構理事に転じ、(独)農業者年金基金理事審理役の山田裕典氏(平成8年・一橋大法)が後任課長として着任した。
 
田中氏は、約20年前に企画官として管理課に在籍していた。その後、文部科学省や三重県庁などへの出向も織り交ぜながら経験値を上げてきた。がっちりとした体躯だが、「運動はあまりやりません」。趣味は読書で、米澤穂信などのミステリー小説を好む。出身地は群馬県。公立進学校の前橋高校卒。50歳。

山田裕典氏

林野公共予算を担う整備課長も交代した。木下仁氏(平成4年・北大)が森林研究・整備機構森林整備センター審議役に移り、後任には、木材産業課木材製品技術室長の土居隆行氏(平成8年・東大)が起用された。平成8年入庁組のトップを切って課長に進出した土居氏は、常に冷静沈着で、怒ったところを見たことがない。隙のなさも漂わせるが、平成10~11年に鹿児島県上屋久町で勤務し、今の奥さんに出会った話になると、目元が緩んだ。趣味は、約10年前の石川県出向時代に始めたゴルフ。月に一度はコースを回るという。東京都西東京市出身。51歳。

土居隆行氏

「どろ亀先生」の教えを受け継ぐ吉本昌朗氏が初の四国入り


さて、ここからは自治体との交流人事をみよう。

高知県林業振興・環境部長の武藤信之氏(平成8年・名古屋大院)が本庁に戻り、土居氏の後任として木材製品技術室長に就いた。

代わって高知県に出たのは、森林利用課総括課長補佐の吉本昌朗氏(平成12年・東大)。林業振興・環境部の副部長として着任した。
 
この吉本氏、実に興味深い履歴を持つ。実家の吉本事業所は、東京大学北海道演習林(北海道富良野市)の指名業者として、平成18年まで素材生産事業などを担っていた。東大北海道演習林といえば、「どろ亀先生」の愛称で知られる高橋延清・同演習林長(東大名誉教授)が「林分施業法」に基づいて天然林施業を確立したところ。それを現場で実践していたのが吉本事業所であり、吉本氏も地元の樹海中学校時代は、実父の隆夫氏に連れられて、「毎日山に行っていた」という。しかも、「どろ亀先生の教えを現場でアレンジしながらやっていた」というから筋金入りだ。飄々としたキャラクターで、「みんなでワイワイやるのが好き」と話す吉本氏。初めての四国勤務だが、すぐに溶け込むだろう。48歳。

吉本昌朗氏

北海道・石川・福井・滋賀県(プラス)日田市にも人材派遣、抜擢も

北海道森林計画課長の山口博央氏(平成15年・信州大院)が整備課の総括課長補佐として本庁に戻り、入れ替わりに木材利用課課長補佐(木質バイオマス推進班担当)の日比野佑亮氏(平成15年・東大)が山口氏のポストに就いた。宮崎県小林市生まれの日比野氏は、初の北海道勤務であり、「身が引き締まる」と少々緊張気味。ただ、休日にキャッチボールをする息子さんは日本ハムファイターズのファンということで、いい潤滑油になりそうだ。

前出の吉本氏の後任には、福井県で県産材活用課長を3年つとめた福島行我(ゆきや)氏(平成13年・北大)が着任した。その福島氏からバトンを引き継いで福井県に出向したのは、治山課課長補佐(施設実行班担当)の蓮尾秀平氏(平成21年・京大)。大学時代はシロアリの研究に没頭し、「木材の防腐防蟻にもつながります」と話す。スリムな体躯で、アジリティ(俊敏性)の高さを感じさせる人物。登山でも健脚を発揮しているようだ。福岡県嘉麻市出身。41歳。


石川県の出向者も交代した。同県森林管理課長の石井康彦氏(平成13年・広島大)が治山課の総括課長補佐に戻り、同課課長補佐(施設計画班担当)の山名祐樹氏(平成17年・静岡大)が同県の森林管理担当課長として着任した。治山課で机を並べていた蓮尾氏と山名氏が出向先でも隣県同士になるとは珍しい。

言うまでもなく、石川県は能登半島地震からの再起が最大のテーマ。山名氏は、学生時代に森林防災工学を学び、「復興に役立ちたい」と爽やかに言う。蓋し適任だ。北海道旭川市出身。42歳。

滋賀県森林政策課長の樽谷宣彦氏(平成13年・九大院)が森林利用課課長補佐として本庁復帰し、経営課課長補佐(林業事業体育成班担当)の水野梓氏(平成18年・宇都宮大)がびわ湖材流通推進課長として滋賀県入りした。同県が国の林野技官を招いたのは樽谷氏が初めて*3。2代目として水野氏が出向するのは、林業振興に本腰を入れていることの表れであろう。飾らない人柄の水野氏は、木材を使う新競技「クップ」*4の選手としても活躍している。

水野梓氏

紙幅が尽きてきた。最後に2人の人物にエールを送る。1人は、林政課広報官から日田市の副市長に就任した服部浩治氏(平成8年・名古屋大)。異例の異動ではあるが、林業地・日田の椋野美智子市長がプロフェッショナルを求めたようだ。服部氏は、中学・高校・大学でバスケットボール部の中心選手。物怖じしないキャラクターを活かして欲しい。
 
もう1人は、新設ポストの森林利用課花粉発生源対策調査官に就いた津山藍氏(同課課長補佐・森林環境保全班担当、平成14年・北大院)。今回の幹部人事の中では一際若く、上司も「抜擢です」と明言する。臆することなく、伸び伸びとやってもらいたい。

服部浩治氏

*1 2024年度 林野庁人事【データファイル】

詠み人知らず

どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体お主は何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。

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