2024年7月5日付け林野庁人事異動解説 動いた人と動かなった人【緑風対談】

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2024年7月5日付け林野庁人事異動解説 動いた人と動かなった人【緑風対談】

青山・小坂体制継続、定年延長も含め人事のタイミング探る


7月5日付けで農林水産省の人事異動が発令され、林野庁幹部にも動きがあった。早速、主要人物の寸評に入るが、その前に「動かなかった人」について触れておこう。

発令前の下馬評段階で最も注目されていたのは、昨年(2023年)7月から長官をつとめている青山豊久氏(昭和63年入省・東大法卒)の去就だった。大臣官房長の渡邊毅氏(昭和63年・東大法)の事務次官昇格が確実視されていたため、慣例として同期の青山氏は長官を辞すのではという観測がもっぱらだった。
 


その観測には、次長として青山氏を支えてきた小坂善太郎氏(昭和63年・名古屋大林)の去就もからんでいた。周知のように、林野庁の長官は、事務官と技官が交互に担っている(いわゆる「たすき掛け人事」)。事務官の青山氏の次は技官の小坂氏が長官になるのが既定路線。問題は、その時期である。

昭和39年生まれの小坂氏は、今月(7月)の19日で60歳になり、定年年齢に達する。その前に、長官に昇格するのが妥当というのが大方の見方だった。だが蓋を開けてみると、7月5日付けの異動者に両氏の名前はなく、現行のトップ体制が継続されることになった。

では、還暦を迎える小坂氏が長官になる目はなくなったのか。そんなことはない。平成28年には、当時の技官次長・沖修司氏(昭和54年・名古屋大林)が定年延長の手続きをし、その後、長官に上り詰めた前例がある。ちなみに、長官になると定年年齢は62歳にまで伸びる。人事は巡り合わせと言われるが、誕生日を睨みながら人材登用のタイミングを探ることになった。

清水氏が林政部長に復帰、眞城氏の長女はなでしこの“宝”


では、本題である「動いた人」の横顔をみよう。本庁の林政部長と国有林野部長が交代した。

林政部長の谷村栄二氏(平成3年・東大経)が大臣官房危機管理・政策立案総括審議官に移り、大臣官房環境バイオマス政策課長の清水浩太郎氏(平成6年・東大法)が林政部長に就任した。谷村氏の異動先は災害対応などを所管する重要ポストであり、栄進との評が目立つ。

後任の清水氏は、令和3年7月から1年弱、林政課長をつとめた。フランス式ファゴットのバソン奏者として知られるが、コロナ禍もあってオーケストラでの活動は中断しているという。入省時に経済局で青山氏に仕えて以来、約30年ぶりに同じ職場で汗を流すことになった。54歳。
 

清水浩太郎氏

退職した矢野彰宏氏(昭和62年・筑波大林)の後任として、国有林野部長の橘政行氏(平成元年・岩手大林)が九州森林管理局長に出た。橘氏は、入庁してから国有林の現場勤務は北海道ばかりで、「九州は全く初めて」。ゆえに、「とても楽しみだが、不安も少しある」と持ち前の柔和な口調で話す。本庁で業務課長→計画課長→国有林野部長と中軸を歩み、もっぱら“頭脳労働”を強いられてきたが、ようやくフレッシュな空気が吸えることになった。58歳。

   

橘政行氏


橘氏からバトンを受けて国有林野部長に就いたのは、経営企画課長の眞城英一氏(平成3年・名古屋大林)。これまでも橘氏の後を追うようにキャリアを重ねてきており、後継ポストに座るのは必然の流れ。何の違和感もなく部長室に移った。

ところで、眞城氏の長女・美春さんは、サッカーのU‐17日本代表でキャプテンを任され、5月にインドネシアで開催されたAFC U‐17女子アジアカップでは大会MVPに選ばれた。将来のなでしこを背負う希望の星だ。眞城氏の同僚に聞くと、「彼も奥さんも運動神経がいいからね」とのこと。親子揃って輝きを増していきそうだ。

  

眞城英一氏

林野に馴染みの事務官が揃う、「なごやっ子」の石井氏を登用


7月5日付け人事では、事務官ポストである関東森林管理局長と近畿中国森林管理局長も交代した。また、本庁の林政、経営、木材産業、森林利用、経営企画の5課長も動いた。紙幅の制限もあるので、目立つ人物の横顔だけ簡潔におさえておこう。

関東局長に着任した松村孝典氏(大臣官房付、平成4年・京大経)は、管理課長をつとめた経験のある元気印の事務官。林政課長に就いた小島裕章氏(輸出・国際局国際経済課長、平成8年・東大経)は木材利用課長としてクリーンウッド法の改正などにあたった。経営課長に起用された谷口正範氏(厚生労働省参事官、平成11年・京大法)も林野庁に在籍していた。前出の清水林政部長とあわせ、関係者にとって馴染みのある面々が揃った。

技官では、経営企画課長に石田良行氏(木材産業課長、平成5年・宇都宮大林)、木材産業課長に福田淳氏(森林利用課長、平成6年・東大林)が前進。石田氏は国有林野部の中枢を担い、福田氏は川下行政にも幅を広げる機会を得た。両人にとって正念場であるとともに、飛躍の場にもなるポジションだ。

最後にアクセントをつけておきたいのが、森林利用課長に登用された石井洋氏(整備課造林間伐対策室長、平成8年・名古屋大林)。一見するとクールで飄々としているが、目配りの行き届く仕事師だ。愛知県名古屋市出身で、「小学校から予備校まで千種区から出たことはありません」という「なごやっ子」。趣味は、文楽など伝統芸能の鑑賞とシブイ。特有の存在感を持つ石井氏が課長としてどんなカラーを発揮するか、期待を持って見ていこう。51歳。

石井洋氏

 

詠み人知らず

どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体お主は何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。

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