国有林の樹木採取権制度を利用して、8~10年間にわたって伐出事業などを行う「樹木採取権者」の第1陣が出揃った。世界的な資源高にロシアの林産物禁輸措置などが加わって、木材需給のひっ迫感が強まっており、国有林内に特区的につくられた同制度が安定供給面で機能していくことが期待されている。
(株)戸川木材と西垣林業(株)も権利を取得
近畿中国森林管理局は3月18日、岡山県新見市の「近畿中国1新見樹木採取区」(岡山森林管理署管内)の樹木採取権者として(株)戸川木材(新見市、戸川陸徳・代表取締役)を選んだ。続いて3月31日には、四国森林管理局が高知県中土佐町及び四万十町にまたがって設定していた「四国1四万十上流樹木採取区」(四万十森林管理署管内)の樹木採取権者に西垣林業(株)(奈良県桜井市、西垣雅史・代表取締役)が決まった。
これで全国10か所にパイロット的に指定されていた「樹木採取区」のうち6か所で樹木採取権者が決定(トップ画像参照)。これから“年度の縛り”などにとらわれることなく、8~10年スパンで計画的に伐出事業を行う段階に入る。残り4か所の樹木採取区については、6月末までの再公募を通じて第2陣となる樹木採取権者が決まる予定。
近畿中国局が樹木採取権者に選んだ戸川木材は、素材生産業とチップ加工業を営んでおり、伐出したヒノキは住宅用材、スギは梱包用材として販売するほか、バイオマス発電所向けに燃料チップを供給していく方針。四国局が樹木採取権者に決定した西垣林業は、関西・中京圏を中心とする販売ネットワークを活かして、土佐ヒノキの新規需要開拓に取り組む。
第1陣の樹木採取権者に選ばれた6者は、いずれも既存の木材流通などとは“住み分け”をして、国有林材の安定供給を目指すことになる。木材需給がタイトになっていることから、樹木採取区での取り組みを国産材全体の供給力強化につなげていくことも求められる状況になっている。
(2022年3月31日取材)
『林政ニュース』編集部
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