5年前から国産材使用の家具を試作、「センダンならいける」
福岡県南部、筑後川の河口部に位置する大川市を中心とした一帯は、日本を代表する家具産地として知られる。だが、最盛期には600以上あった「大川家具」の製造業者が、今では130弱にまで減少。少子化による国内市場の縮小や輸入家具との競合に直面し、新たな事業領域を創出することが喫緊の課題となっている。
その中で、“注目株”として浮上しているのが、センダンをはじめとする国産材を使った家具だ。大川では年に4回、(協)大川家具工業会が主催する展示会が開かれ、全国から多くの来場者がある。同工業会は平成25年の4月展で、関連団体とともに「地域材家具展」のコーナーを設け、センダン、クスノキ、イチョウ、クリ、ヤマザクラなど9種類の九州産木材を使った家庭用家具を提案した。翌26年にも、「国産材の魅力発見」をテーマにした展示を実施。さらに今年2月には、福岡市内で開催された展示会に出展し、オフィスや公共施設向けのコントラクト家具(特注家具)を並べた。

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大川の家具製造業者が国産材利用に本腰を上げたのは、今から5年前のこと。だが、当初は樹種をスギに絞ったため、「割れる、反る、節が多いなど問題があって継続できなかった」と同工業会副理事長の貞苅幸広氏((有)貞苅産業社長)は振り返る。それでも、「資源事情もあって3年前からもう一度国産材をやってみよう」となり、広葉樹にも選択肢を広げた。その結果、現在は「センダンならいけるのではないか」というところまできた。

コントラクト家具で先鞭、競争力の源泉は「本物をつくる」
貞苅氏たちは「センダンならいける」との手応えを掴んだが、まだ原木の供給量は限られており、いきなり既製品が主体の家庭用家具を量産しようとしても無理がある。そこで、まずコントラクト家具などの特注ものに対応しながらセンダンの利用を広げていくことにしている。前述した今年2月の展示会には、その意図が込められている。
大川には、こうしたマーケティング戦略を練る際の知恵袋といえる人物がいる。パナソニックエコソリューションズ創研(株)(大阪府門真市)の上席コンサルタントである中ノ森哲朗氏だ。中ノ森氏は、パナソニック電工(株)(現・パナソニックエコソリューションズ(株))で住設・建材の商品企画開発などを長年手がけ、国内外の業界事情に精通している。大川市に隣接する大木町の出身で、「大川家具」の地盤沈下を憂える一人でもある。

その中ノ森氏が国産の早生広葉樹、なかでもセンダンに着目する理由は、「本物がつくれるから」だ。消費者が何よりも望んでいるのは、「健康的で快適な住空間」であり、「それは本物の力が大きな役割を担う」──こう明言する中ノ森氏は、480余年の歴史をもつ「大川家具」が培ってきた“ものづくり”の力が、センダンなどを使いこなす上で欠かせないと話す。国内にとどまらず、東南アジアなど海外の家具産地や早生樹栽培などの現場を見てきた中ノ森氏の目には、「国産材家具は輸出してもいい」とも映る。
こうした方向性に呼応するもう一人のキーパーソンが、大川にはいる。
全国への発信力を高め、「点」を「線」から「面」に広げる
「次のステップをどうするか」――大川化粧合板工業協同組合の理事長である池末和海氏((有)トマト社長)は、国内外から原木を買い付け、ツキ板や化粧合板を製造・販売している。10年ほど前からは、九州産のスギ・ヒノキ丸太を中国・韓国・台湾などに輸出する事業も展開し、国境を越えた独自のネットワークを築き上げてきた。

その池末氏も、センダンなど早生広葉樹の利用には「大きな可能性がある」と期待をかけており、「大川から1つのモデルを示したい」と意欲を隠さない。
池末氏は、貞苅氏や中ノ森氏らと頻繁に意見交換を重ねながら、「大川モデル」を全国に発信していく道筋を検討している。11月に東京ビッグサイトで開催されるIFFT(国際家具見本市)に設ける大川のブースでも、国産材家具をPRする予定だ。また、家具だけでなく、内装材や建具などの材料に早生広葉樹を使うことも議論をしている。
中ノ森氏は、「まだ点の取り組みだが、これを線にして、面に広げていくために、いろいろな人をもっと“くっつけ”たい」と、コーディネーター役を自認する。そして、「4年前に九州大学で行われたシンポジウムが大きなきっかけになった」と続けた。この言のとおり、平成23年9月に九大で開催されたあるシンポジウムが、九州での早生広葉樹利用を加速する“発火点”になった。続きはこちら。


『林政ニュース』編集部
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