離島を除いて全国で最も人口が少ない奈良県の野迫川村(吉井善嗣村長)は、10月2日にモア・トゥリーズ(more trees、東京都渋谷区、隈研吾代表)との間で「森林保全および地域活性化に関する連携協定」を締結した。隈研吾代表が設計した日本アロマ環境協会の事務所(東京都渋谷区)で協定締結式を行い、多様性のある森づくりや木材活用の促進、人材育成などに協力して取り組んでいくことを申し合わせた。
モア・トゥリーズは、国内外で“連携の輪”を広げながら、多様な樹種を活用した地域おこし活動を進めている。水谷伸吉・事務局長は、「(野迫川村は)海外を含めて24か所目の協定先となる。今後は京阪神の企業を中心にマッチングを図り、林業の活性化に貢献していきたい」と抱負を語った。
燃料転換など3つの新規事業推進、「森林資源を次代に引き継ぐ」
野迫川村の人口は357名(2020年国勢調査時点)。村の面積は約1万5,500haで、このうち97%を森林が占める。村北部は真言密教の総本山である高野山に隣接し、村内には空海ゆかりの社寺があり、熊野古道小辺路が通る。

大消費地から離れている同村の林業は、伐り捨て間伐が中心となっているが、森林環境譲与税などを活用して、3つの新規事業に着手している。
1つは、村内ホテルの熱源燃料を重油から薪に転換し、間伐材の需要を広げて、地域経済を循環させる取り組み。今年度(2024年度)中に体制を整え、来年度(2025年度)から本格的に実施する予定だ。
2つめは、特殊伐採も含めた人材の育成。村内の社寺や民家近くの森林を整備するニーズは年々高まっており、アーボリストトレーニング研究所(愛知県名古屋市)が開く講習の受講費用を一部負担して担い手を育てる。
3つめは、広葉樹資源の活用。針広混交林化を進めながら、アロマなどの新商品開発や森林サービス産業などを展開していく方針だ。このほか、航空レーザ測量による森林整備の基盤づくりにも取り組むことにしている。
吉井善嗣・野迫川村長は、「課題解決に向けた施策を1つでも多くかたちにし、先人から営々と受け継いできた森林資源を次世代に引き継いでいきたい」と話している。
(2024年10月2日取材)
(トップ画像=協定書を取り交わした吉井善嗣・野迫川村長(右)と水谷伸吉・モア・トゥリーズ事務局長)

『林政ニュース』編集部
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