遠隔操作で軟弱地盤にも対応、林地荒らさず、課題はコスト
高性能林業機械による傾斜地作業を安全にサポートする「テザー」の現地見学会が、6月30日に日本キャタピラー合同会社(東京都中野区)の秩父出張所(埼玉県秩父市)で開催された。
テザーは、同社と住友林業(株)(東京都千代田区)及び(株)サナース(神奈川県横浜市)が共同開発した。ベースマシンには、キャタピラー社製の油圧ショベルを用いている(バケットサイズは0.45m3)。外向きバケットでベースマシンを地面に固定し、先端部の滑車から8tまで牽引できる250mのワイヤーを出し、自動応答ウインチによって斜面で作業する機械をけん引する。テザーを設置後は、コックピット内は無人となり、1人で遠隔操作できる。
テザーは、施業地の上部に林道などがあり、ベースマシンの設置場所が確保できるところでの使用が想定されている。これまでに住友林業の社有林や北海道下川町、更別村で実証実験が行われ、最大35度の急傾斜地でも安全に使用できることが確認された。林地のかく乱を抑える効果もある。
見学会の会場は軟弱地盤で、ぬかるんでいる箇所もあった。テザーを操作したオペレーターは、「傾斜が厳しいところでもテザーにアシストされて登ることができた。降りるときも、いきなり揺れるようなことがなく安全に運転できた」と話した。
見学会に参加した日本林業経営者協会の会員は、「人は転びそうになったら手をついて安全を確保する。重機も同じでバランスを崩したらアームでバランスを整えようとするが、ハーベスタやプロセッサなどの高性能林業機械はそうはいかない。とくに傾斜が激しいところではテザーが有効だろう」と感想を述べた。また、森林管理署の職員は、「テザーは林地を荒らさないで作業できるのがポイント。今後は架線集材との連携も重要になってくるだろう」と指摘した。
テザーの本格普及に向けた課題は、導入コストの引き下げだ。住友林業の担当者は、「今は受注生産のため設定価格はなく、その都度の見積もりが必要になる」と説明している。
キャタピラー社などは今後も現地見学会などを重ね、今年度(2022年度)中に市販することを目指している。
(2022年6月30日取材)
(トップ画像=現地見学会には約80名が参加した)

『林政ニュース』編集部
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