森林由来J-クレジットの創出拡大へ制度を見直し

政府が重点課題に位置づけている森林由来J-クレジット(吸収クレジット)の創出拡大に向けた制度見直しの全容が決まった。木材製品に固定されている炭素量を評価する方法についても整理がつき、8月5日のJ-クレジット制度運営委員会で正式に決定された。クレジット取得のハードルが下がることで、森林や木材が吸収・固定する二酸化炭素(CO2)量を“価値化”する動きが活発化していくことが期待される。

90年間利用の木材製品は炭素固定量を評価しクレジット取得可能に

森林由来J-クレジットの利用を促進するために実施する制度見直しのポイントはトップ画像のとおり。主伐後の再造林によるCO2吸収量をカウントできるようにするなど、温暖化防止に関する国際ルールよりも踏み込んだ内容となっている。

現行のJ-クレジット制度では対象外となっている木材製品の炭素固定量についても、90年間利用されるものについては永続性があると認め、クレジットを取得できるようにした。炭素固定量の推計は、プロジェクト実施地で生産される原木の出荷量をベースにした算定式を用いて行う。

9月から「カーボン・クレジット市場」試行、「森林」銘柄も売買

森林に関するJ-クレジット制度の見直しが行われる背景には、脱炭素化を急ぐ政府の積極姿勢がある。「2050年カーボンニュートラル」の達成に向けて、企業等からの投資(出資)を呼び込む新たな仕組みづくりなどを進めており、経済産業省と(株)東京証券取引所は、9月から「カーボン・クレジット市場」の試行的な運営を始める。同市場では、来年(2023年)3月まで実証事業を行った上で本格的な炭素取引につなげることにしており、売買される銘柄には「森林」も入っている。

このスキームに乗って森林由来J-クレジットの取引量を増やしていくためには、クレジットの認証量を増やしていくことが必須条件になる。担当の林野庁森林利用課は、「今回の制度見直しを踏まえて、クレジット取得の裾野を広げていきたい」と話している。

(2022年8月5日取材)

『林政ニュース』編集部

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