一般社団法人滋賀県造林公社(理事長=三日月大造・滋賀県知事)は、国が新たに立ち上げる「カーボン・クレジット市場」*1の実証事業に参加する(8月23日に発表)。同市場は、2050年カーボンニュートラルを達成するために創設するもので、J-クレジットをオープンな場で売買し、企業等による購入を促す。

滋賀県造林公社は、森林の適切な管理によって生み出されるJ-クレジット(森林吸収クレジット)の売り手として同市場に参加して、新たな買い手とのマッチングを目指すことにしており、全国的にも先駆的な取り組みになる。
同市場は、経済産業省から委託を受けた東京取引証券所が実施主体となって制度設計などを進めている。9月20日から来年(2023年)1月末まで実証事業を行い、J-クレジットを実際に売買して取引状況などを検証した上で、本格運用に移る予定だ。

J-クレジット制度では、クレジットの売買を相対取引か入札取引で行うことにしている。滋賀県造林公社もこの2つの取引方法で森林吸収クレジットを販売してきたが、同市場に参加することでオープンな「市場取引」を通じて従来にない新たな買い手を探すことが可能になる。また、同市場では、東証を介して資金決済やクレジットの移転を行うので、売買取引の利便性や安全性が高まるとみられている。
滋賀県造林公社は、現時点で約190万t(CO2換算)の森林吸収クレジットを保有しており、この一部を使って同市場に販売側として参加する。これまで森林吸収クレジットはt当たり1万円前後で売買されてきているが、「市場取引」でより高値の注文が入れば、販売量を増やすことも考えられる。
滋賀県は、県内で創出されたJ-クレジットを「びわ湖カーボンクレジット」と名づけて普及を図っている。滋賀県造林公社の同市場への参加は、森林吸収クレジットの販路開拓とともに、「びわ湖カーボンクレジット」を全国的にPRする狙いもある。

(2022年8月23日取材)

『林政ニュース』編集部
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