秋田県林業公社(秋田県秋田市)と三井物産(株)(東京都千代田区)は、公社林の二酸化炭素(CO2)吸収量を売買可能にするJ-クレジット(森林吸収クレジット)の創出に共同で取り組む業務委託契約を11月4日に締結した。
対象とするのは約2万8,000haの公社林で、このうち約2万4,000haが人工林。今年度(2022年度)中に認証期間(8年間)における森林整備・保護計画やCO2吸収見込み量などを算定したプロジェクト計画書を作成し、来年度(2023年度)に航空レーザ計測やデータ分析などのモニタリング調査を行って、J-クレジットの申請・取得を目指す。
契約締結式に出席した県林業公社の清水譲理事長は、「適切に森林管理を行えばクレジットという新たな価値が生み出され、経営意欲の向上につながる」と期待を述べ、三井物産の内田康弘次世代エネルギー事業部長は、「社有林で学んだノウハウを活かし、森林の価値の可視化に取り組む」と意欲を語った。
おかやまの森整備公社とも契約を締結、面的なまとまりに優位性
三井物産は、国内74か所に合計4万4,000haに及ぶ社有林(三井物産の森)を保有しており、航空レーザ解析技術の導入などスマート林業を実践している。秋田県林業公社との契約締結に先立ち、8月30日にはおかやまの森整備公社(旧岡山県林業公社、岡山県津山市)とも同様の契約を結んでおり、公社林の活用に本腰を入れ始めたかたちだ。
一方で、滋賀県造林公社が国の「カーボン・クレジット市場」実証事業に参加するという新しい試みも始まっている。面的なまとまりのある公社林は、J-クレジット創出の“適地”とみられており、その利用を巡る動きが活発化しそうだ。
(2022年11月4日取材)
(トップ画像=締結書を取り交わした秋田県林業公社の清水譲理事長(右)と三井物産の内田康弘次世代エネルギー事業部長)

『林政ニュース』編集部
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