「2050年長期ビジョン」の実現を目指すデロイトトーマツ【企業探訪】

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「2050年長期ビジョン」の実現を目指すデロイトトーマツ【企業探訪】

約1万5,000人の人員を擁し、監査・保証業務やコンサルティングなど幅広いビジネスを展開しているデロイトトーマツグループ(以下「デロイトトーマツ」と略、東京都千代田区、永田高士CEO)が日本林業の再生に乗り出している。有志メンバーで「Japan Forest 2050」プロジェクトを立ち上げ、来年春には2050年に向けた長期ビジョンを策定し、具体的な事業に着手する予定だ。「日本最大級のビジネスプロフェッショナルグループ」がなぜ今、林業に挑むのか。

森林にもESG投資の波、バックキャスティングで課題解決

「低成長経済が続く中では、フローを生んでくれるストックをどう磨いていくかが問われる。国土の3分の2を占める森林を整備して利活用できれば大きなインパクトをもたらす」──プロジェクトの中心メンバーである有限責任監査法人トーマツの北爪雅彦氏は、こう話す。金融業界では環境・社会・ガバナンスに配慮したESG投資のウエイトが高まっており、世界的に森林への資金流入が増えている。

デロイトトーマツは、グループ全体で様々な「社会価値創出プロジェクト」に取り組んでいるが、その一角に森林が位置づけられ、林業のビジネス化が重要課題に浮上している。北爪氏は、「一般の企業は投資から回収までそれほど長い期間は認められないが、パートナーシップ制である当グループは、パートナーの同意が得られれば長期的な時間軸での投資と活動ができる」と強調する。

2年前に民間企業の林業部門から転職し、プロジェクトを担っている鈴木秀明氏は、「30年後の姿を示し、将来から逆算して今やるべきことを決めるバックキャスティングの考え方で取り組んでいく」と意欲を口にする。

他産業の知見や技術を積極的に導入、“プロ”の協力も得る

デロイトトーマツにとって、畑違いともいえる林業に参入して商機はあるのか。この点に関し、プロジェクトの主要メンバーである片桐豪志氏は、「日本林業には改善できるところがいろいろある。従来からの経験でやっている部分が多いが、データやサイエンスに基づいて客観的に見直していくことが必要ではないか」と指摘する。これまでに林野庁から調査事業などを受託しており、樹木採取権制度のガイドラインづくりにも携わった。7月に発足した「林業イノベーションハブセンター」(通称「森ハブ」)では、有限監査法人トーマツが事務局となって運営している。

ビジョンづくりに取り組む(左から)宮本、鈴木、北爪、片桐、大貫の各氏

プロジェクトメンバーは、7月に東京・丸の内エリアのオープンイノベーションプラットフォーム「TMIP(Tokyo Marunouchi Innovation Platform)」の場でキックオフイベントを行い、ビジョンを肉付けしていく段階に入っている。片桐氏は、「デロイトトーマツはあらゆる産業にかかわっている。林業と他産業の知見や技術を融合させながらネットワークを広げていきたい」と語る。

この呼びかけに応えて、“林業のプロ”が2人、援軍として加わった。1人は、元林野庁職員で物林(株)新事業推進部長の大貫肇氏。もう1人は、「森ハブ」の委員で(株)バルステクノロジー社長の宮本義昭氏。「大貫・宮本両氏と出会えたことで実践力が高まった」と北爪氏は力を込め、こう続けた。「新たな領域でのコンサルは、現場での経験をベースに、社会課題の解決を目指していくことが求められる」。

(2021年9月3日取材)

(トップ画像=2050年長期ビジョンのイメージ:川上バージョン)

『林政ニュース』編集部

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