スターターキットとして「Amazonで買えるようにしたい」
「いずれはAmazonでポチッと買えるようにしたいんですよね」──コレモクの仕掛人の1人であるReegle(株)(高知市)の代表取締役・北添幸誠氏(39歳)はサラリと口にした。
コレモクは、高知県産のスギ・ヒノキを使った大断面集成材で建てる木造ビルの「高知モデル」として開発された。だが、あえて「高知」の名は冠していない。それは、「もっと広い範囲で木を普及していきたいから」(北添氏)だ。
コレモクの基本仕様は図のとおりで、4階建てまでの木造ビルを「地域の製材所や工務店でも手がけられる。特殊な手法で建てるわけではない」のが最大のポイントだ。
木造ビルに興味や関心を示す施主や設計・施工者は増えているが、「いざ建てようとなると、どこから手をつけていいのかわからない。鶏が先か卵が先かという話がずっとあった」。その取っ掛かりのハードルを下げるのがコレモクの狙いであり、「スターターキットとしてプッシュ型の商品提案をした」。全国に広く普及することを最優先しており、意匠登録や特許申請は行わない。「オープンでやっていく。囲わずに仲間を増やしていきたい」という姿勢を貫いている。
高知県産ヒノキの集成材とCLTで明るく開放的な空間を構築
コレモクの第1号棟は、高知県内唯一の集成材メーカーであるウッドテクノス(株)(高知市)の事務所棟として5月に竣工した。以降、北添氏をはじめ関係者のもとには、問い合わせや見学の申し込みが相次いでいるという。
第1号棟には県産ヒノキの集成材を使っており、接合部には(株)スクリムテックジャパン(福岡県筑紫野市)のホームコネクター(GIR接合)を用いた。屋根には県産ヒノキのCLTを使用。ラーメン構法によって広々とした室内空間が構築されており、ヒノキの色合いもあって明るく開放的な事務所になっている。
北添氏によると、第1号棟の建て方自体は3日ほどで完了し、「これから施工実績を重ねてノウハウが蓄積されればもっと短縮できる」との見通しだ。
建築コストに関しては、「年末までに物件や用途などに応じた透明性のある価格を示したい。鉄骨造などと遜色のないコストで納まるだろう」という。
コレモクがターゲットにしているのは、「木造で3階、4階のテナントビルなどを建てたい」、「間取りを自由に変更できる柱のない空間が欲しい」というニーズに応えて、都市の木造・木質化に加速度をつけること。そのために、壁のパネル化や接合技術の改良、使用樹種の拡大(スギ等)など様々な“応用編”が構想されている。北添氏は、「集成材メーカー等が建て方まで行うオプションサービスなども検討したい」としている。
「防災×林業」の木製品に高評価、「困りごとを解決していく」
高知県出身の北添氏は、県内の構造設計事務所で木造について学んだ後、2015年に独立して北添建築研究室を設立。6年前からは高知県木材協会(TOSAZAIセンター)の販売促進員としても活動している。
高知県はNPO法人ティンバライズ(team Timberize、東京都渋谷区)との間で2018年に連携協定を結び、都市木造の可能性について多角的な検討を続けている。北添氏はティンバライズのメンバーでもあり、検討作業の中で提案された「高知モデル」のプロトタイプがコレモクに結実し、社会実装された。
これを踏まえ、北添氏は、艸(そう)建築工房(高知市)の代表取締役所長・横畠康氏とともにReegleを立ち上げ、コレモクの販売窓口を担っている。
このReegleもユニークな会社だ。北添氏は、「木に関わる建築設計のちょっと手前のコンサルティングをやっているんですが、わかりづらいですよね」と話し、「こんなものも扱っています」と言って第1号棟の2階に上がっていった。
そこにあったのは、「ジラーフユニット」と呼ばれる木製品。普段は内装の壁材やベンチとして使用し、災害が起きたときなどには道具なしに組み立てて5分ほどで簡易避難スペースに“変身”する。イベント時のブースやキッズスペースなど平時でも利用可能だ。「防災×林業」をコンセプトにした新商品として2023年のウッドデザイン賞を受賞し、高知県の防災製品にも指定されている。
北添氏は、「木に関する困りごとがあったら、Reegleに投げかけて欲しい。解決するルートは必ずある」と口にし、「木造建築や木製品への評価は高い。問題はどうやって売っていくかであり、そこに答えを出したい」と目線を上げた。
(2024年9月13日取材)
(トップ画像=「コレモク(KOREMOKU)」第1号棟の外観)
『林政ニュース』編集部
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