【譲与税を追う】高知県安芸市─森とまちと海をつなぐ「流域構想」を推進

【譲与税を追う】高知県安芸市─森とまちと海をつなぐ「流域構想」を推進

高知県東部の中心都市である安芸市は、年間を通じて豊かな陽光に恵まれ、雪もほとんど降らない。その温暖な風土が進取の気性を育むのか、同市はジャーナリストの黒岩涙香など数多くの偉人や著名人を輩出している。なかでも白眉の存在となっているのが三菱グループの創始者で「東洋の海上王」と呼ばれた岩崎彌太郎。紛れもない「土佐の英雄」だ。だが、青年期は「居村追放」とされ、生家も街中から離れてポツンとしていたという。こういうエピソードは、地元の人が口を開かないと、なかなかわからない。
それはさておき、今、同市を訪ねて必見すべきは、市役所だ。
同市の新しい市役所は、安芸駅の近くにあった築60年以上の旧庁舎を移転し、外構部を含めて約35億円の工事費を投じて新築した。新庁舎は、今年(2024年)1月に開庁したばかり。南海トラフ地震に対応すべく防災機能と行政機能を両立させ、森林環境譲与税を活用して内装などにふんだんに木材を使用したランドマークにふさわしい建物になっている。

災害に強く明るく親しみやすい新庁舎が市民にも職員にも好評

安芸市の新庁舎は、免震構造を備えた地上3階建て。外観は武家屋敷をイメージさせるデザインで、鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)だが、庁舎内では内装や什器に地元産材が多用されている。

市民の利用頻度が高い窓口スペースも地元産材が多用されている

正面玄関を入ると吹き抜けのロビー(市民フロア)が広がっており、床(圧密フローリング)や腰壁、壁面、カウンターなどには同市産のヒノキなどを用いて、明るく開放的な空間をつくり上げている。木製のテーブルセットも置かれており、休憩や雑談などがしやすい。ロビーに隣接する食堂もヒノキで仕上げ、清潔感がある。屋根やルーバーにはスギのCLTを使用しており、新庁舎全体の木材使用量は約180m3に達している。

『林政ニュース』編集部

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