「生物多様性を高める林業経営指針」初策定 ネイチャーポジティブ達成し、新規投資促す

「生物多様性を高める林業経営指針」初策定 ネイチャーポジティブ達成し、新規投資促す

林野庁は、新たに「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」を定める。国際目標である「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の達成に寄与し、森林づくりに新たな投資を呼び込むため、生物多様性の保全につながる林業経営のあり方を初めて示す。昨年(2023年)12月に設置した有識者検討会が「指針」の案をまとめ、2月23日から3月7日までパブリックコメントを行った。これを踏まえて、3月中に「指針」を正式決定し、森林経営計画や市町村森林整備計画などに反映させる方針だ。

ネイチャーポジティブとは「生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せること」を意味し、2030年までに実現することが国際会議などで合意されている。日本政府も「30by30(サーティバイサーティ)」目標の達成に向けて「OECM(自然共生サイト)」の設定などを進めている*1。開会中の国会で生物多様性地域連携促進法を改正して「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」にバージョンアップし、民間企業等の参画や連携強化を促すことも予定している。

大手企業を中心に地球温暖化対策や生物多様性保全に関する取り組みが広がっており、関連情報を開示して新規投資を呼び込むことが国際的なスタンダードにもなってきている。日本国内で行われている林業経営と生物多様性保全の関わりを整理して「指針」を示すことは、こうした潮流に合わせる狙いがある。

新たに定める「指針」では、「持続可能な森林経営」を実践することが生物多様性保全につながるとの基本認識を示した上で、具体的な森林の取り扱い手法を「ポジティブリスト」として示す(参照)。また、主伐・再造林を進めて草地環境を創出することの重要性や、目標設定やモニタリング事項などを盛り込んだ「森林ポジティブ計画」を作成する意義などについても解説する。「指針」の全文は、正式決定後に林野庁のウェブサイトで公開する。

(2024年3月10日取材)

(トップ画像=群馬県みなかみ町の「赤谷の森」(国有林)に生息しているイヌワシ、画像提供:関東森林管理局)

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしていきます。

この記事は有料記事(894文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。