野村不動産溜池山王ビルが竣工、開放的な木質の賃貸オフィス

東京都 木造非住宅

野村不動産溜池山王ビルが竣工、開放的な木質の賃貸オフィス

野村不動産(株)(東京都新宿区、松尾大作・代表取締役社長)は、10月31日に木質サステナブルオフィス「野村不動産溜池山王ビル」を竣工し、11月20日に報道関係者向けの見学会を開催した。2021年から進めてきた旧野村不動産溜池山王ビルの建て替え事業が完了した。

新設した「溜池山王ビル」は、地下1階地上9階建てで、延床面積は5594.97m2。木造と鉄骨造のハイブリッド構造で建設し、木材使用量は471.30m3。国産のスギやカラマツなどを用いており、約410tの二酸化炭素(CO2)削減効果があると試算されている。設計・施工は、清水建設(株)(東京都中央区、井上和幸・代表取締役社長)が担当した。

大きな特長は、21m×18mの無柱の開放的な木質空間を構築していること。また、原状回復工事を軽減する間仕切りシステムやレイアウト変更を容易にする床吹出空調システム、可変性の高い照明設備などを整備して利便性の向上につなげている。

竣工前に賃貸契約が成立しており、12月から入居者が利用している。同社の担当者は、「環境への配慮に加え、ワーカーの健康と知的生産性の向上に寄与できる」とセールスポイントを話している。

なお、同社の親会社にあたる野村不動産ホールディングス(株)(新宿区、新井聡・代表取締役社長)は、昨年(2022年)11月に「『森を、つなぐ』東京プロジェクト」をスタートさせ、東京都奥多摩町(師岡伸公町長)の町有林に地上権を設定して、生物多様性を重視した森林づくりと、地産地消をベースにした木材サプライチェーンの構築などに取り組んでいる。同プロジェクトの第1弾として、東日本旅客鉄道(株)と連携して進めている国家戦略特別区域計画「芝浦プロジェクト」(港区)で建設する建築物(2025年竣工予定)の一部に、奥多摩町産材を使用することにしている。

シミズハイウッドや塗るだけで準不燃材料になる塗料を採用

「溜池山王ビル」には、清水建設が開発した木材を適材適所に使用する最新の木質化技術「シミズハイウッド」が採用され、被覆材の薄さを追求した木質耐火構造部材「スリム耐火ウッド」、木材を鉄骨梁の被覆兼化粧材とした耐火木鋼梁「ハイウッドビーム」、CLTをRCスラブの型枠とした合板床「ハイウッドスラブ」、木と鉄骨の接合方式「ハイウッドジョイント」が使用されている。

「準不燃化クリア塗料」を使用したエントランスのラウンジ

また、エントランスのラウンジの天井には、木材に塗るだけで準不燃材料になる「準不燃化クリア塗料」を用いた。同塗料は、火災時に加熱された塗膜が発砲し、厚さ10mm程度の断熱層を形成して木材の燃焼を抑制する。今年(2023年)9月に国土交通大臣認定を取得しており、同社の担当者は、「今後改良を進め、一般販売を目指したい」としている。

(2023年11月20日取材)

(トップ画像=野村不動産溜池山王ビルのフロア、約50名まで働ける(国土交通省のサステナブル建築物等先導事業(木造先導型)に採択されている))

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしていきます。

この記事は有料記事(1290文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。