瞥見「モクコレ 2024 Plus」 異業種参入続々、広葉樹活用も進む

瞥見「モクコレ 2024 Plus」 異業種参入続々、広葉樹活用も進む

国産材展示商談会「WOODコレクション 2024 Plus(モクコレ)」(東京都と実行委員会の共催)が昨年(2024年)12月19・20日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催され、38都道府県から275企業・団体が出展、2日間で5,700名以上が来場し、203件の商談が行われた。「モクコレ」も9回目を迎え、洗練された生活者目線の製品が目立つようになってきた。

「今こそゲームチェンジのチャンス」─小池知事が需要喚起呼びかけ

開会挨拶で小池百合子・東京都知事は、「今こそゲームチェンジのチャンス。オールジャパンで国産材の需要喚起と新たな木材利用の可能性を生み出していきましょう」と呼びかけた。

また、オープニングセレモニーでは「ウッドシティTOKYOモデル建築賞」の受賞式が行われ、最優秀賞に清水建設(株)の「温故創新の森 NOVARE」が輝いた。

会場内では、主催者企画の一環として「植える、育てる、収穫する、使う」のテーマ展示を実施。中央では森林総合研究所とソフトバンク(株)による電動四足歩行ロボット「SPOT」が闊歩し、それを取り囲むようにヤマハ発動機(株)、サントリーホールディングス(株)、松本システムエンジニアリング(株)などがブースを設けたほか、木塀・木製サッシなどの展示も行われた。

ステージプログラムでは、木造建築から森林・林業にまつわる豊富なトピックスが披露された。その中で、腰原幹雄・東京大学教授は、東京都の公共施設に木造建築物が1つもないことを指摘。これを受けて都森林課は、「関係部局を巻き込んで取り組んでいく」と課題を示した。

アパレルやロッカー、セキュリティゲートなどで木質化が進展

今回の「モクコレ」で、目を引いたトレンドは2つ。1つはアパレル・金属・化学系など異素材を手がける企業の進出。もう1つは国産広葉樹の活用だ。

アパレル系では、(株)シンサイカトー(大阪府大阪市)の「縁樹の糸」を用いた製品が主催者企画展示の一角を彩ったほか、一流ブランド服飾製品の輸入販売を行っている三喜商事(株)(大阪府大阪市)が「木糸」を使った製品ブランド「Alveri(アルベリ)」の着物やシャツ、ジャケットを展示した。同社の担当者によると、今後も新アイテムのリリースが予定されている。

「Alveri」の着物など

また、宅配ボックス・宅配ロッカー最大手の(株)フルタイムシステム(東京都千代田区)は、長野県上松町産ヒノキ材を使用した「フルタイムロッカー樹 WOOD LOCKER」を披露した。マンションやアパートなどに設置される宅配ロッカーはスチール製しかなく、冷たい印象がつきまとう。そこで同社は、上松町と連携して木曽ヒノキ材の採用に踏み切った。担当者は、「宅配業界でも木材へのニーズが高まっており、引き合いは強い」と手応えを話す。

「フルタイムロッカー樹 WOOD LOCKER」

このほか、金融機関向けの金庫やセキュリティシステムなどを提供している(株)熊平製作所(広島県広島市)は、セキュリティゲート「ユニゲート」の天部を木質化したウッドタイプを出品した。木製家具メーカーの(株)マルニ木工(同)と協業して開発したもので、広島県産ヒノキ材を活用している。

天部を木質化した「ユニゲート」

コナラやクヌギを有効利用、中四国で“草の根”的な広葉樹活用が広がる

国産広葉樹の活用では、北海道や東北などの産地メーカー等による出展が多い中で、中四国地域からも“草の根”的な動きが出てきた。

香川県家具商工業協同組合は、「100%メイド・イン・讃岐プロジェクト」で製作したコナラやクヌギなどの家具を並べた。同プロジェクトは、県内の川上・川下関係者が連携して、ナラ枯れで使えなくなる前にコナラやクヌギなどを活用するためにスタートした。試行錯誤を重ねて乾燥技術などを確立し、ナラ枯れを発見次第、速やかに利用できる体制が整ってきている。

「100%メイド・イン・讃岐プロジェクト」の家具

島根県西部山村振興財団を母体とする(株)suhu(浜田市)は浜田市産の広葉樹を活かした木工ブランド「iyasaka」の新製品「MUku・12」を発表した。反り止めにムク(無垢)材に差し込むことで薄型天板を実現し(特許出願済み)、スタイリッシュな棚をつくった。同社も、広葉樹アイテムの拡充を目指している。

Muku・12

(2024年12月19日取材)

(トップ画像=開会にあたり恒例のウッドカットを行った)

『林政ニュース』編集部

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