目次
林産事業は受託生産が主体、共販(市売)に加え協定販売
遠藤理事長の呼びかけに応じて集まったのは、和田正明・日田市森林組合専務、梶原大平・日田郡森林組合木材共販所長、小野芳孝・玖珠郡森林組合木材共販所長、河野一郎・山国川流域森林組合参事の4名と、大分県農林水産部の高村秀樹・林産振興室長。遠藤理事長は、早速、問いかけた。
はじめに各組合の共販事業の概要について教えて欲しい。
当組合の市場での年間丸太取扱量は約6万8,000m3、林産事業の大部分は受託生産で、主伐が6割、間伐が4割となっている。共販(市売)には常時40社以上の買方が参加している。また、協定販売も行っている。
当組合の丸太取扱量のうち市場での年間取扱量は約6万8,000m3で日田市森林組合と同規模だ。林産事業は、ほぼ受託生産となっている。共販には日田市の製材工場を中心に40社以上が参加している。協定販売については、日田市森林組合と同じように取り組んでいる。
当組合では年間に市場で約2万5,000m3の丸太を取り扱っている。林産事業については、主伐は買取り、間伐は受託生産としている。共販には15社程度が参加している。協定販売に関しては、日田市及び日田郡森林組合と同様に行っている。
当組合の市場での年間丸太取扱量は約2万6,000m3。林産事業は、主伐は買取り、間伐は受託生産が基本になっている。協定販売も実施している。
大口需要者への対応が急務に、組合の枠を超えて取り組む
4組合は以前から事業連携の検討を進めてきたと聞いている。それがここにきて一気に具体化してきた理由はなにか。
今後の需要動向を見据えた場合、いかに大口需要者に対して供給していくかが需要になる。個々の組合が小規模な共販事業を続けていてもなかなか十分に対応できない。そこで4組合がまとまって協定販売を行っていくことの検討を開始した。
共販、すなわち市売では連携しないのか。
組合ごとに丸太の取扱量も違うし、市売に参加する買方の数も違う。協定販売の状況も各組合によって異なる。そうした違いを踏まえた上で、各組合の市売は維持し製材所等への安定供給は継続すながら協定販売で連携しようという話になった。
協定販売での連携は具体的にどのように行うつもりなのか。
それぞれ共販事業を行っている中でどのような形で連携していくかが課題になる。今まで以上に山元に利益を還元していくためには、どのような方法で行うのがよいのか。これまでも4組合で協議を行ってきたが、当事者同士ではなかなか前に進まないという実態もあった。そこで、行政である大分県にも協議に入っていただき、具体性を持って検討を進めることになった。
丸太納入窓口を1本化して入出金処理や価格交渉などを担う
日田地域は、戦前からわが国屈指のスギ産地として発展してきた。スギの価値を高めるために、原木市場で周密な仕訳を行い、現物熟覧を基礎とした市売によって販売する取引形態が確立されている。そこに月間丸太消費量が約1万m3に達する合板工場や大型の木質バイオマス発電施設ができたことのインパクトは大きい。県はどのように対応しているのか。
連携して供給することの影響について様々なシミュレーションを行った結果、4組合が窓口を1本に明確化し、丸太の納入で連携することが望ましいのではと考えている。
1本化した窓口はどのような役割を担うのか。
第1はハネ材などのクレームへの対応などが考えられる。
第2は入出金処理、第3は価格交渉だ。窓口を1本化することで、需要者側も精算業務の軽減化などが図れるのではないか。
価格交渉はどのように進めるのか。
今まではそれぞれの組合の実績をもとに取り組んでおり、交渉の余地がほとんどなかった。しかし、4組合が連携して丸太を供給し、ロットを大きくすることで、より交渉の幅が広がると想定している。
一口に連携といっても、現場のやり方を変えていくのは簡単ではないだろう。
今までと違うことをしようとすれば、当然、組合ごとに課題が出てくる。まずはそうした課題を洗い出し、解決策を見出していきたい。
山元(森林所有者)と直接結びついている“強み”を活かす
国産材合板のフェイスとバックにはヒノキが使われている。大分県の素材生産量に占めるヒノキの割合は約2割と必ずしも多くはないが、今後、ヒノキの丸太納入でも連携していく計画はないのか。
大分県に限らず、九州全域でヒノキ丸太の需給がタイトになっている。4組合の林産事業に占めるヒノキの割合はそれほど多くはないが、1本化していくことは今後の重要な検討課題だ。
大型の工場が丸太を集荷する際には、原木流通業者や商社も介在してくるだろう。その中で4組合の存在感をどう出していくのか。
我々森林組合の大きな特長であり“強み”は、山元(森林所有者)と直接結びついていることだ。山元へダイレクトに利益を還元できる。
なるほど。山元への利益還元を増やしていくためには、共同納入で価格アップを図るとともに、買取り林産を増やして立木の形で在庫をもつことも重要になるのではないか。(後編につづく)。
遠藤日雄(えんどう・くさお)
NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。