キーテックなど4者が山梨県で持続的林業 年間6万m3の需要をベースに循環利用目指す

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キーテックなど4者が山梨県で持続的林業 年間6万m3の需要をベースに循環利用目指す

合板・LVLメーカーの(株)キーテック(東京都江東区、中西宏一社長)など4者が連携して、山梨県北杜市内の共有林で持続的な林業に取り組むプロジェクトがスタートした。キーテックは山梨県から年間約6万m3の原木(丸太)を調達しており(参照)、安定した需要と適正な価格をベースに「伐って植える」サイクルの確立を目指す。

3月2日に、キーテックと樫山共有林管理保護組合(北杜市、浅川幾夫組合長)、山梨中央林材(株)(南アルプス市、平田譲社長)、峡北森林組合(北杜市、坂本正輝組合長)の4者が森林整備協定を締結した。同協定に基づき、樫山共有林管理保護組合が北杜市高根町清里で管理している約57haの森林(地目は恩賜県有財産模範林)を「キーテックの森・樫山」と命名して、計画的な伐採と植林、保育作業などを行っていく。立木の伐採・搬出などは山梨中央林材が担い、峡北森林組合が森林経営計画を作成して再造林と保育を行う。キーテックは伐出された原木を再造林可能な価格で買い取る。キーテックの中西社長は、昨年(2022年)6月に中央7団体が署名した「共同行動宣言2022」をあげ、「日本合板工業組合連合会の一員として、『宣言』が目指す姿を実現していきたい」と話している。

協定の期間は当面10年間とし、年間の伐採・植林面積は5~10ha程度を計画している。伐採後は、主にカラマツをha当たり1,200本の低密度で植林して下刈り回数の削減など低コスト化を図るとともに、アカマツや広葉樹の侵入を促して混交林化を進める。30~50年後に主伐を実施することも予定している。

原木販売手数料の2%を再造林費に、共有林のモデル目指す

4者が合意したプロジェクトでは、再造林費用を確保するため、素材生産事業者らが協力して資金を拠出する仕組みをとる。

キーテックへの原木販売は、山梨中央林材が近隣の素材生産事業者ら18者をとりまとめて行う。山梨中央林材は、手数料として原木販売額の5%を徴収しているが、このうち2%を再造林費用に充てる方針だ。また、各生産工程の効率化によるコスト削減や、原木買取価格を通常の市場取引価格より高めに設定することなどを通じて、“山元還元”を増やしていくことにしている。

山梨中央林材の平田社長は、「特定の誰かが再造林の資金を負担するのではなく、みんなで協力して森林を利用して育てるサイクルをつくっていく」と強調し、「軌道に乗れば県内の共有林に横展開していきたい」とも語っている。

今回のプロジェクトが誕生した背景には、県有林(恩賜県有財産模範林)を共有林として貸し出したが、その経営が継続困難になっており、伐採後に再造林されずに県に返還され、県が再造林費を負担している実態などがある。

同県の県土の約3割を占める県有林は恩賜林(おんしりん)と言われ、明治時代末期に皇室から同県に下賜された元御料林が起源となっている。その中には、明治時代以前から住民が利用していた森林もあり、樫山共有林管理保護組合が管理する森林はその1つとなっている。県の担当者は、「ここでの取り組みが広がれば、県内の共有林経営を次世代につなげられるようになる」と期待を寄せている。

(2023年3月2日取材)

(トップ画像=協定を結んだ(左から)坂本正輝・峡北森林組合長、平田譲・山梨中央林材社長、中西宏一・キーテック社長、浅川幾夫・樫山共有林管理保護組合長)

『林政ニュース』編集部

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