国産LVLが切り拓く新規マーケットの可能性【遠藤日雄のルポ&対論】

全国 合板・LVL 業界団体

新型コロナウイルスの感染が国内で初確認されてから早くも1年2か月が過ぎた。この間、林業・木材・住宅業界は様々な制約を受けながらも事業を継続し、非常時における底堅さもみせている。一方、国外では米国や中国で木材需要が想定外の高まりをみせ、材価の高騰が懸念される事態が生じている。コロナ・ショックを経てビジネス環境が目まぐるしく変わる中、今後の見通しをどう立てていけばいいのか。そのヒントを得るために、遠藤日雄・NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長は、全国LVL協会の中西宏一会長にリモート対論を呼びかけた。

昭和40年代に「平行合板」の名称で生産が始まったLVL(単板積層材)は、製造工程の改善や新製品の開発などを重ねながら生産量を増やしてきており、国産材の“出口”を広げる上でも欠かせない存在になってきている。

生産量も認知度も上昇、コロナ+増税+人口減が懸念材料

中西氏は、2015年4月にLVLのトップメーカーである(株)キーテック(東京都江東区)の社長に就任し、全国LVL協会の会長を兼務して、新規需要の開拓などに取り組み続けている。

遠藤理事長

国(農林水産省)が木材統計の調査対象品目にLVLとCLT(直交集成板)を追加したのは2017年であり、合板や集成材に比べると本格普及を推進中の木質材料といえる。直近データである2019年の木材統計によると、LVLの生産量は18万8,000m3で、前年より4,000m3(2.2%)増加している。

中西宏一・全国LVL協会会長(キーテック社長)
中西会長

おかげさまで、住宅と非住宅の両分野でLVLの認知度が高まってきている。国内の工場数も徐々に増え、供給力もついてきた。

遠藤

コロナ・ショックの影響はどうか。

中西

昨年(2020年)の新設住宅着工戸数は、約81万5,000戸で前年比1割減だった。弊社(キーテック)のLVL生産量も10%程度ダウンしており、LVL協会の加盟企業にも何らかの影響が出ている。ただし、それがコロナだけに起因しているとはいえない。

遠藤

どういうことか。

中西

一昨年10月の消費増税による反動減の影響も出ている。また、少子高齢化で国内の住宅市場が縮小過程に入っているという基本的な要因も抑えておかなければならない。

面材としての利用拡大がカギに、耐火・不燃の品揃え拡充

遠藤

今年はどうなると見通しているか。

中西

ワクチンの接種が始まるなど期待を持たせる動きはあるが、コロナ問題が収束するまでには時間がかかるだろう。経済全体が疲弊している面もあり、新設住宅着工戸数が大幅に伸びるとは考えにくく、コロナ前からの課題である非住宅分野の需要拡大が重要になる。

遠藤

具体的にどう取り組んでいくのか。

中西

これまでは主として構造用LVLを梁や柱に使用してもらうことを重視し、実績も上がってきた。これを踏まえて、次のステップとして面材としての利用を進めたい。非住宅分野の大きなマーケットは、床や壁になると考えている。

遠藤

非住宅用の木質材料には防耐火処理が求められる。

中西

すでに構造用LVLの梁や柱で1時間耐火認定を取得しており、さらに製品開発を進めている。同様に、内装用のLVLについても準不燃認定を順次取得しており、製品のバリエーションも増えてきた。品揃えとしては、様々なニーズに応えられるようになってきている。

全国各地に加工拠点が必要、スチールとのハイブリッドも推進

遠藤

LVLの競合品にはCLTや集成材などがあるが。

中西

CLTも集成材も非住宅分野での利用拡大に取り組んでいるので、相乗効果を発揮して木材が使われていないマーケットを開拓していければいい。
その際に問われてくるのは、LVLやCLTの素材としての供給力だけでなく、アッセンブルして加工する能力になる。

遠藤

LVLの生産工場を増やすだけでは不十分ということか。

中西

非住宅の物件では、設計会社やゼネコンなどのオーダーに応じた部材を納めるケースが圧倒的に多く、規格品だけではとても対応できない。
素材としてのLVLを施工現場にマッチできるように加工する拠点と技術者が全国各地に配置されていないと、輸送コストだけでも大きな負担になってしまう。
これから地方の中小規模の設計事務所などにLVLの製品特性を知ってもらうPR活動を強化することにしているが、注文をいただいても加工段階で詰まってしまってはビジネスにならない。早急に解決しなければならない課題だ。

遠藤

最後に、住宅・非住宅を通じてLVLの伸びしろが期待できる分野を聞きたい。例えば、高騰する米材製品に代わって国産LVLが採用される可能性はないか。

中西

すでに2×4(ツーバイフォー)部材で使えないかといった打診が来るようになっている。大手ハウスメーカーなどの標準部材として採用されるまでには時間を要するだろうが、時機を逸しないように対応していきたい。
非住宅関係で力を入れていきたいのは、LVLの厚板の開発だ。床にも壁にも使うことができる。
また、スチール(鉄骨)とLVLを合わせたハイブリッド柱の開発も計画している。これまでは柱も梁も全部木でつくろうとしてきたが、スチールの良さと木の良さを両方引き出す発想もあっていい。ユーザーにとって品質や性能がわかりやすい製品を提供し、マーケットを広げていきたい。

(2021年2月18日取材)

(トップ画像=LVLの内装材を使用している那須塩原市の市立図書館「みるる」、画像提供:キーテック)

遠藤日雄(えんどう・くさお)

NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。

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