(前編)先人の遺志を継ぎ飛躍を目指す伊万里木材市場【遠藤日雄のルポ&対論】

(前編)先人の遺志を継ぎ飛躍を目指す伊万里木材市場【遠藤日雄のルポ&対論】

今年(2024年)の1月8日、佐賀県伊万里市から全国に「悲報」が発せられた。それは、同市に本社を置く(株)伊万里木材市場の代表取締役社長・林雅文氏が死去したとの知らせだった*1。享年67歳。国産材業界のトップリーダーとして、これから円熟期の活躍が期待されていただけに、突然の訃報に関係者は言葉を失った。遠藤日雄・NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長も、その1人だった。林氏とは半世紀近い親交があり、国産材業界のあり方について何度も激論を交わした仲だった。
訃報に接して以降、遠藤理事長は、林氏亡き後の同社の行く末が常に気にかかっていた。ただ、そこには「悲しみを乗り越えて必ず前に進める」との確信もあった。なぜなら林氏が右腕として一目置いていた伊東貴樹氏(50歳)が後任の社長に就任したからだ。伊東氏は、林氏の遺志を継いで、1月16日に同社の専務取締役から社長に昇格し、関連会社である(株)さつまファインウッド(鹿児島県霧島市)の社長などにも就いて、グループ全体を統括しながら陣頭指揮をとっている。遠藤理事長は、その伊東新社長に今後に向けた“新たな戦略”を聞くことにした。

日本を代表する国産材供給基地に拠点を置き、成長を続ける

伊万里木材市場の本社と原木(丸太)をストックする土場は、伊万里湾を臨む伊万里木材コンビナートの中にある。

同コンビナートには、国内製材最大手の中国木材(株)(広島県呉市)の伊万里事業所が運営する集成材・プレカット工場や、同社が出資している西九州木材事業協同組合の大型製材工場のほか、関連施設や設備が揃っており、原木の調達から製品加工、端材等の有効利用までを一貫してこなせる体制を整えている。2004年に稼働を始めてから今日に至るまで、日本を代表する国産材供給基地としてその名を轟かせており、業界の活力を測るバロメーター的存在にもなっている。

伊東氏は、1993年に伊万里木材市場に入社し、林前社長の薫陶を受けながら原木の集荷・販売に関わるノウハウを身につけてきた。自他ともに認める現場たたき上げのプロフェッショナルだ。

遠藤理事長

1月に亡くなられた林前社長に対して改めてお悔やみを申し上げたい。かつて林氏と「対論」をした際、伊万里市の街中で原木の市売をしていた伊万里木材市場にとって、このコンビナー...

遠藤日雄(えんどう・くさお)

NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。

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