木質資源からSAFを生産し脱炭素化促進 製紙メーカーが実証プラントなどを整備

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木質資源からSAFを生産し脱炭素化促進 製紙メーカーが実証プラントなどを整備

航空業界が進める脱炭素化が木質資源利用に新たなビジネスチャンスをもたらし始めている。航空機などの燃料を環境負荷の低いSAF(サフ)()に切り替えることが国内外で共通テーマになっており、木材由来のバイオエタノール等へのニーズが高まってきている。すでに製紙メーカーは、主要製品を紙から航空燃料にシフトする動きを活発化させており、国産材の新たな出口(需要先)が広がる可能性が出てきた。

SAFは、持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)の略称で、木材など再生可能な資源からつくられた航空燃料をいう。 現在、ジェット機など航空機に使われている燃料は原油を精製して生産されているが、国際民間航空機関(ICAO)は2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする目標を達成するためSAFの利用量を増やす方針を明らかにしている。日本政府も2030年に国内ジェット燃料使用量の10%をSAFに置き換える目標を設定した(トップ画像参照、画像の出典は「第2回持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会」(2022年11月7日開催)資料)。

こうした潮流をとらえて、製紙業界トップの王子ホールディングス(株)は、鳥取県米子市の王子製紙米子工場内にSAF向け木質由来エタノールの実証プラントを整備し、今年度(2024年度)後半から最大年間1,000キロリットルを生産することにしている。

日本製紙(株)も住友商事(株)及びGreen Earth Institute(株)と連携して、国産材を原料としたバイオエタノールを2027年度から年間数万キロリットル生産する計画を公表。また、大王製紙(株)とレンゴー(株)は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの助成を受けて、パルプや古紙を原料にしたバイオエタノールの生産実証事業に着手している。

製紙各社は、木質資源の利用に関する豊富な知見を持っており、既存のパルプ設備をエタノール生産に用いることもできる。今後、SAF向けエタノール生産を商業ベースに乗せるためには、量産化によるコストダウンとともに、原料となる木材の安定的な確保が必要になる。日本製紙連合会の担当者は、「本格的に実用化するためには、国際燃料規格の取得などクリアしなければいけないハードルがある」とした上で、「製紙業界の強みを引き出しながら国産材の価値を高められるように取り組んでいきたい」と話している。

(2024年7月12日取材)

『林政ニュース』編集部

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