2030年度までに「等方性大断面部材」を開発 グリーン基金で支援、世界初の社会実装へ

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2030年度までに「等方性大断面部材」を開発 グリーン基金で支援、世界初の社会実装へ

合板の製造技術をベースにした新しい木質材料「等方性大断面部材」の開発が国家プロジェクトとして進められる。

木材は、繊維方向と直交方向では強さが異なり、「強度の異方性」を前提とした建築設計が必要になっているが、新たに開発する「等方性大断面部材」は、いずれの方向にも強い特性を持つ世界初の木質材料となり、工期の短縮や躯体の軽量化、設計・意匠の自由度拡大など多くのメリットをもたらすと見込まれている。2030年度までに社会実装(実用化)し、高層建築物等の木造化などに幅広く利用して、国産材の需要拡大につなげることが計画されている。

セイホク・西北プライ・森林総研からの提案を採択、「超厚合板」の進化形

「等方性大断面部材」の開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に造成されているグリーンイノベーション基金を活用して行われる。同基金は、2020年度第3次補正予算によって2兆円規模で創設され、2050年カーボンニュートラルの目標達成に向けた革新的な技術開発に取り組む企業等を2030年度まで継続的に支援することにしている。

農林水産省は、同基金を使ったプロジェクトに関する研究開発・社会実装計画を昨年(2022年)8月18日に策定。この中で、「高層建築物等の木造化に資する等方性大断面部材の開発」に51億6,000万円を投じて取り組むとした。その後、実施主体の公募を行い、セイホク(株)、西北プライウッド(株)、森林研究・整備機構森林総合研究所で構成するコンソーシアムを採択したことが昨年12月19日に公表された。

同計画では、「等方性大断面部材」の開発について、国産材を原料とし、支点間距離8m、2時間耐火で10万円/m3以内での製造技術を確立するとともに、日本農林規格(JAS)と一般的設計法の案を示して普及を進めることを目標に掲げている。

開発にあたっては、「わが国の高度な合板製造技術を土台」とした上で、単板の厚さを現状より数倍厚くするほか、厚さの異なる単板を組み合わせたり、単板の一部を挽き板に置き換えるなど、従来とは異なる発想で製品化を目指すことにしており、厚剥き可能なロータリーレースや新たな製造ラインの開発なども進める。

「都市(まち)の木造化」を睨んだ新製品としては、「超厚合板(CLP、Cross Layered Plywood)」の開発も進められているが、「等方性大断面部材」は、「超厚合板」をさらに進化させた木質材料と位置づけられており、略称は「iMEP(アイメップ)、Isotropic Multi-layer Engineered Panel」とすることが検討されている。

(2022年12月19日取材)

(トップ画像=「等方性大断面部材」のイメージ))

『林政ニュース』編集部

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