燃料材不足で朝来バイオ発電所が稼働停止 事業断念し官民連携「兵庫モデル」解消

燃料材不足で朝来バイオ発電所が稼働停止 事業断念し官民連携「兵庫モデル」解消

官民が連携して燃料材の調達から木質バイオマス発電所の運営までを一体的に行ってきた「兵庫モデル」が行き詰まり、兵庫県朝来市の朝来バイオマス発電所が12月24日に稼働を停止する。昨年来のウッドショックなどで木材価格が上昇した影響が燃料材にも及んで安定的な確保が難しくなり、事業継続を断念せざるを得なくなった。

朝来バイオマス発電所は、朝来市の生野工業団地内にあり2016年12月に稼働を始めた*1。FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の認定を取得した未利用材専焼の発電所で、出力規模は一般家庭約1万2,000世帯分に相当する5,600kW。発電所の運営は、関西電力(株)のグループ会社である(株)関電エネルギーソリューションが担っており、発電した電力は関西電力に売電している。発電所を安定して稼働させるためには年間に約6.3万tの燃料チップが必要であり、官民連携で「兵庫モデル」と呼ばれる独自の供給体制をつくってきた。

「兵庫モデル」の概要

「兵庫モデル」は、2013年12月9日付けで協定を締結した兵庫県森林組合連合会、兵庫みどり公社(現ひょうご農林機構)、関西電力、兵庫県、朝来市の5者による協働事業で、のようなスキームにより、兵庫県森連の「be(バイオマスエネルギー)材供給センター」がとりまとめ役となって発電所へ燃料チップを販売してきている。県内の森林組合や素材生産業者、チップ業者らは「be材等供給協議会」(事務局=兵庫県森連)をつくり、同センターに原木やチップを納入。同センターは、約1.5haの原木(丸太)ストックヤードのほかチップの加工施設、貯蔵設備などを備えている。

同センターと同協議会はbe材の取引価格を20年間固定でt当たり6,700円(センター着値)と決めており、価格変動を避けることで山元への安定的な利益還元や雇用創出などを目指していた。

赤字覚悟でbe材用原木確保を進めるも損失膨らみ撤退決める

朝来バイオマス発電所の稼働開始によって「兵庫モデル」が動き出したが、燃料チップとなるbe材用の原木は当初から計画どおりには集まらなかった。このため、兵庫県森連と関電グループは、燃料チップの取引価格を見直して運賃負担能力を高め、be材用原木の集荷範囲を広げるなどの対策を打ってきた。一時は、be材供給センターの原木ストックヤードが満杯になったこともあったが、ウッドショックなどの影響で原木の取り合いが激しくなり、be材等供給協議会のメンバーも合板用などに原木を出荷するようになったため、昨年(2021年)夏頃からbe材用原木の調達が滞るようになった。また、今年(2022年)の秋頃からは、輸入チップ等の高騰を受けた製紙メーカーが原木を従来よりも高値で購入するようになり、be材用原木の確保難に拍車がかかった。

こうした状況に、兵庫県森連は赤字も覚悟で市場からbe材用原木を調達することで対応した。2013年に締結した5者協定には、「社会現象が激変しない限り20年間一定量を固定単価で取引する」とあるが、FITでの売電価格が固定されていることもあって、「兵庫モデル」のスキームを大幅に見直すことは難しかった。

兵庫県森連にとってbe材用原木購入の損益分岐点はt当たり7,000円だが、これを上回る価格での調達を続けたため、損失額は約1億円まで膨らんでいるという。築山佳永・兵庫県森連専務理事は、「これ以上の負債は抱えられないため供給事業から撤退する」と話している。発電所の稼働停止とともに、12月25日付けで5者協定は解約され、「兵庫モデル」は解消する。今後は、発電所とbe材供給センターの売却などが検討されることになる。

(2022年12月22日取材)

(トップ画像=朝来バイオマス発電所)

『林政ニュース』編集部

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