震災復興を担う大断面集成材量産工場「FRAM(エフラム)」【突撃レポート】

震災復興を担う大断面集成材量産工場「FRAM(エフラム)」【突撃レポート】

2011年の東日本大震災と原発事故で大きな被害を受けた福島県浪江町。震災からの復興を目指す同町では、先端技術を活用して新たな産業基盤を構築する国家プロジェクトが進んでいる。林業・木材産業分野では、国内最大規模の大断面集成材量産工場「福島高度集成材センター(略称:FLAM(エフラム)」が新設され、本格稼働を続けながら国産材の出口(需要)を広げている。

「福島イノベ構想」に基づき国内最大規模の量産工場本格稼働

「FLAM」は「福島イノベーション・コースト構想」に基づいて建設された国内最大規模の大断面集成材量産工場だ。昨年(2022年)7月から試験運用が始まり、今年(2023年)から本格稼働に入っている。

同構想は、震災でダメージを受けた浜通り地域等の産業を復興させることを目的にした国家プロジェクトで、廃炉処理やロボット・ドローン、エネルギー・環境・リサイクルなど6つの分野で先駆的な取り組みが進められている。「FLAM」は、同構想の農林水産業分野で採択された林業・木材産業関連では唯一のプロジェクトになる。

「FLAM」がある「棚塩産業団地」は、太平洋に面した海抜約20mの高台にあり、かつては山林や田畑として利用されていた。昭和40年代に東北電力(株)(宮城県仙台市)が浪江・小高原子力発電所の建設を計画し、用地買収などが進められてきたが、震災によって2013年に建設計画が白紙撤回された。その後、2017年に東北電力から浪江町に用地が無償譲渡され、同町が同構想の土台とするため2020年に整備した。

2021年10月に完成した「FLAM」の敷地と工場設備は同町が所有し、運営は(株)ウッドコア(同町、蔭山寿一社長)が担っている。同社は、同町で製材業を営む朝田木材産業(株)(朝田英洋社長)と郡山市で大断面集成材などを生産している藤寿産業(株)(西村義一社長)が出資して2018年に設立した。現在は、両社からの出向者も含め約50名が「FLAM」で働いている。

欧州の工場をモデルに建設、年間1万5,000m3の集成材を生産

「FLAM」は、欧州の量産型工場をモデルにしており、大断面集成材を原木から一貫生産する体制を整えている。9万4,000m2の敷地内に、製材工場、集成材工場、人工乾燥機、製品倉庫などを配置し、原木の入荷から最終製品の出荷に至る一連の工程を効率よく処理できるようにしている。

製材工場の内部

製材工場の年間原木消費量は約6万m3で、直径16〜45cm、長さ2〜4mまでの原木を受け入れている。入荷後に剥皮した原木は、3Dスキャンによってコンピューターが木取りを自動的に判別し、最適な製材を行う。

集成材工場の年間生産量は約1万5,000m3で、最大1,250mm×1,250mm×12ⅿまでの大断面集成材を加工できる。

集成材工場の内部
高出力高周波プレス機

大断面集成材を量産する際の要となるプレス機は2台設置している。このうち1台は、国内で初導入した高出力高周波プレス機で、ラミナを2〜10分で接着できる。もう1台の2次接着メガプレス機では、製造した集成材を張り合わせることで特大断面の集成材も生産可能になっている。

加工の最終段階では、2台の大型CNC加工機でプレカットを行い、金物などを取り付けて仕上げている。

また、各工程で排出されるバークや端材などは、「FLAM」内のバイオマスボイラーに投入し、人工乾燥機の熱源として利用している。

放射線量対策も実施しており、原木の選木時やラミナに加工した段階で放射線量を測定し、福島県木材協同組合連合会が定める基準値を上回った場合は生産ラインから除去する対策をとっている。

グループ企業の藤寿産業とも連携、「都市の木造化」に応える

「FLAM」が本格稼働に入って約5か月が過ぎた。藤寿産業の専務取締役でもある相澤貴宏・ウッドコア取締役は、現状について、「工場はフル稼働しており、順調な滑り出しを切れた」と話す。

「FLAM」に持ち込まれる案件は、グループ企業の藤寿産業が受注したものが中心であり、同社は中大規模の木造建築の設計・施工も手がけている。首都圏を中心に都市部での木造化プロジェクトが増えており、必要な部材を割り出した上で、「FLAM」が柱や梁などを量産する一方、同社の郡山工場では耐火集成材や湾曲集成材、造作用集成材などを生産する役割分担を進めている。

相澤貴宏・ウッドコア取締役

「FLAM」が稼働したことにより、「量産化によるコスト削減だけではなく、納品スケジュールの柔軟性も高まり、物件の対応力向上につながっている」と相澤取締役は手応えを口にする。

今後も大断面集成材へのニーズは増えていくと見込まれるが、供給面では、トラックドライバーの働き方改革に関わる「物流の2024年問題」などもあり、サプライチェーンの強化が必要だ。

「FLAM」は、首都圏から車で約4時間と好立地にあり、ウッドコアは、近隣に倉庫を新設し、物流会社と連携する方針を固めている。相澤取締役は、「体制は整ってきたので、グループ一丸となって都市部の木造化需要に応えていきたい」と意欲をみせている。

(トップ画像=FLAMの外観、集成材工場の全長は240m)

『林政ニュース』編集部

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